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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第3章 少年の秘密
「アナタ、あんなに強けりゃ、女の中じゃあ敵無しでしょう?何もわざわざ好き好んでこーんな男ばっかの中に入らなくたって、お家で精進重ねてったら、そのうちここに居る様な鍛えてるっぽい男だって、簡単に手玉に取れる様になるんじゃなぁい?」
ウバシの言葉を聞いているのか居ないのか、ジャナはぽつりと呟きました。
「……どれでもありません。」
「え?」
「私は、暗殺者でも、間諜でも、淫花でも有りません。」
ジャナの言葉を聞いたウバシの眉が、ぴくりと動きました。
暗殺者と間諜はともかく、淫花が男を蜜の罠に陥れる女を指すというのは、この地方の裏の世界での隠語です。
普通の家の者がーーしかも、女の子がーー軽く口に出来る様な言葉では有りません。
「……じゃあ、なあに?……普通のお家じゃ、無いのよねえ?」
目が隠されて表情の見えないジャナの顔を、ウバシは軽く睨め付けました。
「……家は、有りません。育ての親である師匠からは、私の親は流行り病で早くに亡くなったと聞きました」
ジャナはウバシの方に顔を真っ直ぐに向けると、きっぱりした声で告げました。
「私を育ててくれた師匠の家業は、治療処です。私は、療術家です。」