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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第4章 天女とじゃじゃ馬

「ずっと一緒に暮らして居たのに、学校を終えたら私に何の相談も無く、修行に行くって、決めてしまっていて……私はほんの子供でしたから、置いて行かれたって思ってしまって、随分と拗ねましたわ。戻ってきてからも、修行の話を聞く度に、こちらの皆様とは家族みたいにとっても仲良しなんだって、羨ましく思ってましたのよ」
「うっ」

 美しい奥方ににっこり微笑まれたビスカスは、顔から火を吹きそうに真っ赤になって、絶句しました。

 修行は、楽しい事ばかり有った訳では有りません。むしろ苦しく辛く逃げ帰りたくなりそうな事が、毎日山と有りました。生涯の主と心に決めた、大事なお嬢様を御守り出来る立場になる為に修行を決めたのですが、お嬢様の存在が無かったら、すぐに辞めて居たでしょう。今や奥方となったお嬢様の事を思わぬ日は、一日たりとも無かった程です。

 けれど、帰ってからお嬢様には多少面白おかしく話を聞かせて居ましたし、月日が経ってからはここを懐かしむ気持ちが強くなったので、「羨ましい」などと言われたのでしょう。「焼き餅を焼いた」とまで言われて、ビスカスは奥方がいじらしくて可愛くて、今すぐ連れて帰りたくなりました。
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