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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第4章 天女とじゃじゃ馬
目をきらきらさせてはにかむ様子は、いつもの素っ気ないジャナと違って、愛らしい女の子にしか見えません。奥方に前髪をきれいに分けて貰い、奥方のしていた髪留めで止めて貰って、鏡を見せられて嬉しそうにしております。
「えっと……兄さん……?」
「何よ」
「あいつぁ……あの子ぁ、もしかして」
「何よ。はっきり喋りなさいな」
「俺ぁ……もしかして、あれに妬かなくっても良いって事ですかい……?」
ビスカスの視線の先には、感激のあまりか奥方に抱き付いて、ベタベタとくっついているジャナの姿が有りました。
「知らないわよ。妬こうが煮ようが、好きになさいな」
「や、だって……一体、どーいう風の吹き回しで」
「知らないってば!」
「兄さん、いつの間に女でもイケる様になっ」
「不潔っ!不適切っ!!」
「ぶふぅっ!!」
兄弟子のまさかの変心に茫然と呟き続けるビスカスの顔面に、ウバシの裏拳が炸裂しました。
「……酷っ……拳の前に、言葉で語って下せぇよ……」
「五月蝿い。お黙り猿」
テーブルで繰り広げられている荒々しいやり取りをよそに、女二人の楽しげな声が長椅子の方から聞こえて来ます。
「女でも、ね……そんな可愛いもんだったら、良かったんだけどねぇ……」
ウバシはジャナの入門から今までの事を思い出し、深々と溜め息を吐きました。