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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第4章 天女とじゃじゃ馬
*
「失礼致します、師範」
ある日ウバシが私室で物書きや事務をしていると、訪問者が有りました。
「ん?……ネリか。何だ?」
生真面目な顔をした中堅の弟子は、きっちりとお辞儀を致しました。
「お時間、宜しいですか?今期の入門者についてのご報告です」
「ああ、頼む。入ってくれ」
入室したネリにウバシは椅子を勧めましたが、短い時間ですので、と固辞されました。
「入門希望者五十四名、合格者は九名です。うち一名は、肉体的な条件は満たしていないものの特例で合格した者ーージャナですね」
「そうだな」
「その後の修行振りは、いずれも順調です。ジャナも含め、脱落者は今の所居りません」
「それは重畳」
「ジャナは小柄で、他の者に比べると力も有りませんが、それを上手く使った技で、互角に渡り合っています……体術の研究も、進んで居るのですよね?」
「うむ」
ウバシは、頷きました。
ジャナは小柄ながら体術に長けており、それを研究して門下に役立てるという条件で入門を許されて特例で合格となり、尚且つ審査の際にウバシの目に留まって気に入られ、お手付きとなった……というのが、門下内で広まっている内容でした。
実際は女だてらに研究材料を求めて、男だらけの修行と闘いの場に性別を偽って乗り込んで来た療術狂いなのですが、色んな意味で内部の人間には言えません。
「従来の技の分析の研究も、新しい技を編み出す研究も、ジャナの体術の知識のお陰で非常にはかどって居る。ジャナの纏めた研究結果を指導者に伝えて行く場を、時々設けたいものだな」
「……先日の講習は、素晴らしかったです」
ネリは、感心した様に唸りました。
「失礼致します、師範」
ある日ウバシが私室で物書きや事務をしていると、訪問者が有りました。
「ん?……ネリか。何だ?」
生真面目な顔をした中堅の弟子は、きっちりとお辞儀を致しました。
「お時間、宜しいですか?今期の入門者についてのご報告です」
「ああ、頼む。入ってくれ」
入室したネリにウバシは椅子を勧めましたが、短い時間ですので、と固辞されました。
「入門希望者五十四名、合格者は九名です。うち一名は、肉体的な条件は満たしていないものの特例で合格した者ーージャナですね」
「そうだな」
「その後の修行振りは、いずれも順調です。ジャナも含め、脱落者は今の所居りません」
「それは重畳」
「ジャナは小柄で、他の者に比べると力も有りませんが、それを上手く使った技で、互角に渡り合っています……体術の研究も、進んで居るのですよね?」
「うむ」
ウバシは、頷きました。
ジャナは小柄ながら体術に長けており、それを研究して門下に役立てるという条件で入門を許されて特例で合格となり、尚且つ審査の際にウバシの目に留まって気に入られ、お手付きとなった……というのが、門下内で広まっている内容でした。
実際は女だてらに研究材料を求めて、男だらけの修行と闘いの場に性別を偽って乗り込んで来た療術狂いなのですが、色んな意味で内部の人間には言えません。
「従来の技の分析の研究も、新しい技を編み出す研究も、ジャナの体術の知識のお陰で非常にはかどって居る。ジャナの纏めた研究結果を指導者に伝えて行く場を、時々設けたいものだな」
「……先日の講習は、素晴らしかったです」
ネリは、感心した様に唸りました。