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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第4章 天女とじゃじゃ馬
「あれでジャナの事を皆に理解して貰えて、本当に、良かった……」
(女ってバレちゃったりとか面倒な事になんなくって、ほんっと、安心したわー)
頷いているウバシを見て、ネリは言いにくそうに躊躇いながら口を開きました。
「あの……師範……」
「何だ?」
「その……ジャナと師範は……えーと……」
「ん?」
「ただいま戻りました」
ネリが、言葉を選んでいた間に。
「ああ、ジャナ。お帰り」
ジャナが帰って参りました。
「今日の訓練は、終わり?」
「はい、師範さま」
「今日も良く頑張ったね!!」
ウバシはジャナの頭をわしわしと撫でました。
二人にとっては色気もへったくれも無い、ジャナが入門した翌日から習慣になった、学校帰りの子供と出迎えた母親的な儀式です。
(依怙贔屓じゃあ、無いんだけど……女の子が一人で男共に混じって鍛錬に励んでるって思うと、ついつい甘くなっちゃうのよねー)
「……あ。打ち身!」
自分がジャナを甘やかしていることに苦笑していたウバシの目に、青痣が飛び込んで来ました。ジャナの白い二の腕辺りに出来ているので、何かの拍子で袖が捲れると、よく目立ちます。
「手合わせで、攻撃を避け損ねて……大したこと有りません」
「せっかく綺麗な肌なのに、気をつけないと……お風呂で沁みない?」
「多分平気です。傷じゃ無いから」
「そう?痛かったらすぐ言って」
ウバシはお転婆な娘を案じる母の様な気持ちで、溜め息を吐きながらも微笑みました。
ウバシにとってもジャナにとっても、女同士の「お疲れー」「お疲れさまでーす」程度の労いの会話……だったのですが。
「あっ、あの!!」
「あ、ネリ先生。先程はありがとう御座いました」
「やっ、ジャナ、大変真剣に鍛錬してて結構……あの
師範っ?」
「んー?」
「報告は、以上ですのでっ、私はっ、失礼致しますからっ!!……大変、お邪魔致しましたっっ!!」
「ネリ先生、どうかなさったんでしょうか……」
「……さあ?」
ネリが顔を真っ赤にしてぺこりと頭を下げて出て行くのを、二人は端から見たら今にも抱き合いそうな至近距離で、不思議そうに見送りました。