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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第4章 天女とじゃじゃ馬
「ジャナ?」
「はい」
わしわしと撫でていた手を止めて、僅かに覗いている瞳に目を合わせて問いました。
「何か困ってる事、なぁい?」
元々の性質なのか、ここに来る時に覚悟をして来たからなのか、それとも顔の上半分が隠れている事が多いからなのか。ジャナはほとんど愚痴や相談を口にせず、顔にも出しませんでした。
例えば、入門と講義の間の不穏な空気が漂っていた時期に、当て擦りや意地悪をされていたらしい節が有りました。しかし、周りから心配の声を何度か聞いた位で、本人は何も言わずに淡々としておりました。
それ以来、ウバシはこうして困り事を聞かせてくれる様に、時々ジャナに頼んでいるのです。
「困っている事……ですか……」
「ええ。何でも良いのよ?遠慮しないで言ってみて」
「本当に、何でも良いのですか?」
「もちろん。小さな事でも、構わないわよ?」
「何でも良いなら、一つ有ります」
「なあに?」
「金的です。」
「……は?」
ぽかんと口を開けたウバシに気付かず、ジャナはううむと唸って腕組みしました。
「私には、分からないのです……金的への攻撃の痛みが」
「……ジャナ……」
「はい?」
(アタシゃそういう「困った」が聞きたいんじゃあ無いっつーのっ!!)
頭痛を覚えたウバシの口からはその言葉が出そうになりましたが、なんとか思いとどまりました。
ウバシ自身が「何でも良い」と言ったのです。打ち明けられた困り事の相談には、内容がどうあれ、乗ってやらねばなりません。