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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第5章 閑話 兄弟子夫婦のその夜の話
「あなた、いろんな人と、すぐ仲良くなるしっ……モテるしっ……」
「はあ?俺ぁ今まで生きて来てモテた事なんざ、いっぺんたりとも有りやせんぜ?!」
それらの意見は、どっちもどっちでしょう。
ビスカスは、確かに人と気安く仲良くなれるたちです。かと言ってローゼルの言うようにモテモテな訳でもありませんが、ビスカスが言うように全くモテない訳でも有りません。
「気付いてないだけじゃないのっ?私の時も、好きって言っても結婚してって言っても疑ってばっかりで、全然信じてくれなかったしっ!……今日だって、修行時代の知り合いって殿方達に、嬉しそうに挨拶されてたじゃないっ」
(……そりゃ、半分はリュリュのせいですぜ……)
確かに、昔よく行っていた店屋が代替わりしていて、何軒かの店主に懐かしそうに声を掛けられました。どの店主も修行の頃は子どもだったので、声を掛けて来たのはビスカスが遊んでやった当時と見た目がほとんど変わって居ないせいと、もう一つは恐ろしく綺麗な女性を連れて居たせいでしょう。
「それに……それにっ、師範様にもっ、好かれてるしっ……」
「んな事だったら」
そこだけは多少脛に傷持つビスカスは、反論で誤魔化す事にしました。ローゼルには口が裂けても言いませんし、墓の中まで誰にも言わずに持って行くつもりですが、あの兄弟子に修行時代に特別に好かれて居た事が無くは無いのです。
「リュリュだっていろんな奴に好かれるし、ジャナとだってスグリ様とだって、妙に仲良くしてるじゃねーですかっ!!」
「え?」
(今更何驚いてんだよ、この地上の至宝で絶世の美女で唯一無二の水晶の薔薇めがっ!!)
有り体に言ってローゼルは、色んな人どころか、無駄な嫉妬に燃える者以外の、ほぼ全ての人に好かれます。人だけでなく、動物にもです。植物だってローゼルが微笑むと、よく育つ様な気がします。
「ジャナやスグリ様とは、仲良しだけど……妙に、って、どういう事……?」
「そりゃ……」
(なんですっげえ賢い癖にんな簡単な事が分かんねぇんだよ、この眩しいくれぇ神々しい天女様ぁよ!!)
ローゼルに困惑気味に呟かれ、ビスカスは唸りました。