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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第6章 男装の弟子、女装する
*
「お式のロゼ姉様……本当に、輝いていて、お幸せそうで、お美しくてっ……まさに、至高の女神様でしたっ……!」
ジャナは式の最中のローゼルの事を思い出し、目をきらきらさせて、中空を見詰めました。
今は式と宴席の間の中休みなので、新郎新婦は招待客と離れて別室で休んでいます。部屋の外には正式な護衛が付いているので、宴席が始まるまではウバシとジャナも与えられた客間で一休みしておりました。
「それに、あのダンス……!本っ当に、素晴らしかったです……!」
「ああ、あれねえ……」
ウバシはジャナにちらりと目をやって、純粋に感激しているらしいのを見て取ると、小さく溜め息を吐きました。
式では、新郎新婦による踊りの披露が有りました。ウバシと少々面識の有るビスカスの義兄が話してくれたところによると、この地で昔から行われている、伝統的な男女の踊りという事でした。
「元々は、踊って二人の相性を見る為の物なのです。息が合わない様だと、結婚は考え直せと言われるのですが……この二人の場合、そういう意味では踊るだけ時間の無駄ですね。単なる惚気か自慢です」
踊りが始まる前に、苦笑混じりにそう告げられた通り。
踊り自体はジャナの言う通り素晴らしい出来だったのですが、見る者が見ると、かなり色っぽい物でした。最初から最後まで目を離す間もなく繰り広げられる巧みな踊り技と醸し出される人目を憚らぬ仲睦まじく艶っぽい雰囲気に、招待客達はすっかり浮き足立ちました。式が一旦お開きになった時には、まるで新郎新婦の閨をうっかり覗いてしまったかの様な、そわそわした空気が流れました。
(中には、この中休みが休みどころじゃ無くなった方々も居るかもねえ……なのに、この子と来たら、そんな事には全っ然気付きゃしないのねえ……)
ジャナはまだ十七ですし、住んでいたのも田舎でしたし、育てられたのも療術一筋の治療処です。
育ての親である師匠から教わった療術上必要な性的知識や、入門してから熱心に聞き齧っては集めている甚だ怪しげな男の生理には詳しくとも、実際は恋も口づけもしたことが無さそうなおぼこさでした。
数ヶ月共に過ごすうち、自分の事をジャナの母親代わりの様に思い始めたウバシは、年頃に見合わぬジャナの初心さが安心なような、心配なような、複雑な気持ちでありました。