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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第6章 男装の弟子、女装する

「……あの踊り、ちょーっとやり過ぎじゃあなかった?ビスカスったら、浮かれて調子に乗り過ぎたんじゃあないかしら?」
「いいえ!!ロゼ姉様が素晴らしいのはもちろんですけど、ビスカスさんも、素晴らしかったです!!」

 ジャナは椅子から身を乗り出さんばかりにして、ウバシに熱く語りました。

「あれは……あれはまるで、手練れ同士の手合わせの様でした…!」
「手練れの、手合わせ……」

 結婚式での新郎新婦の余興に対する評価にしては随分剣呑な表現ですが、ジャナは至って真剣です。

「……あの速さ、お二人の繰り出す技の正確さ、切れの鋭さ……!ビスカスさんが凄いのは予想の範囲内でした、先日手合わせして頂きましたから……けれど、ロゼ姉様もっ、負けず劣らずでっ!!」

 ジャナは興奮のあまり、椅子から立ち上がりました。

「ロゼ姉様も、ビスカスさんにちゃんと付いてらっしゃっていて、時には先手をお取りになって……!!本当に、お見事でした。もしかして、ロゼ姉様も修行なさったら、稀に見る優れた技の使い手になられるのではないでしょうか!?」
「ジャナ……」

(この娘っ子は、ほんっとに色気もクソも無いのね……)

「……奥様が修行なんて、ビスカスが許す訳無いでしょ……」
「……それは、そうですね……」

 ジャナが心底残念そうなのを見て、ウバシは目眩を感じました。何故この娘には、情緒が部分的にごっそり欠けて居るのでしょう。
 いくら身体能力が高くとも、水晶の薔薇と謳われた佳人に闘人館で修行をさせようなどと言うのは、想像だけでも罰当たりです。
 もし奥方命のビスカスに知られでもしたら、良くて烈火の如く怒鳴られるでしょうし、最悪の場合は誰も見た事が無い位冷ややかな顔で瞬殺されて、お終いでしょう。
 ウバシは我知らず、ぶるっと震えました。
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