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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第6章 男装の弟子、女装する
今朝も侍女が一人寄越されて、髪を綺麗に梳かして貰って、短くとも出来る形に上手く纏められて可愛く結われています。
(こうして見ると、立派に女の子よねえ……)
ウバシは珍しく照れて赤くなっているジャナを見て、娘を眺める母親の様に、目を細め……かけたのですが。
「はい。思いのほか、女装が上手く行きました」
「……え、女装……」
細めかけたウバシの目は、謎の単語で再びカッと見開かれました。
ジャナは、元々女の子です。
普段男の子の格好をしているのは、女人禁制の地で修行をするためです。
女の子の服を着るのは久し振りでしょうが、それは果たして「女装」と言うのでしょうか。
「師範さま。私、今回の女装、とても褒められているのです」
「……そう、ね……?」
ローゼルもビスカスも大喜びして褒め千切りましたし、ローゼルの兄も父も、親友夫妻も、その他の招待客達も、愛くるしいジャナを見て、可愛い可愛いと褒めました。
「そこで、思ったのです……」
「うん?」
ジャナは、もはや可愛らしい女の子ではありませんでした。
その目は、新しい技を発見したときのように、キラキラをはるかに通り越して、ぎらぎらと燃えています。
「女装……これは、もしや、非常に、使えるのではないかと……!」
「……使える……女装……?」
燃えるジャナとは反対に、ウバシは悪い予感で背筋がぞくっとしました。
……そこに。
「失礼致します」
「はあい?」
誰かが扉を叩く音が、響きました。
「ウバシ様、ジャナ様。宴の支度が整いましたので、お知らせに参りました」
「はーい!……行きましょ、ジャナ!!」
ウバシはその知らせに、渡りに船と、乗っかったので。
ジャナ曰くの「使える女装」についての話は、持ち越しということになりました。