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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第6章 男装の弟子、女装する

 宴席が、始まりました。

 ご馳走に、お酒に、音楽。
 式よりも人が増え、中休みにお召し替えをした者や、せざるを得なくなった者が着飾って、一層華やかな雰囲気です。
 ジャナは口を半開きにしてぽーっと眺めていましたが、ややあってはっとして顔を引き締めました。

「師範さまっ」
「なあに、ジャナ」

 物言いたげなのに困ったような様子を見たウバシは、ジャナの方に少し屈んでやりました。

「……これだけ人が増えると、良からぬ者が入り込む隙も増えるかもしれませんね……。衣装を変えた者も居る様ですが、人の出入りはどのように管理しているのでしょう?あと、食物に毒を入れたりされる可能性も」

 背伸びしてこしょこしょと耳元で囁く様は、傍から見れば大男と少女の可愛らしい内緒話のようです。しかし、実際に話されている内容は、全く穏やかではありません。

「そうねえ。曲者に対しては、ちゃんと人員を割いているようだけど……」

 ウバシはジャナの内緒話に、うっすらと微笑みました。

 ウバシはこの機会にジャナを女の子として過ごさせるつもりではありましたが、弟子としての経験も積ませるつもりでありました。どうやらジャナは女の子として振る舞うよりも、弟子としての修行の方に、自然と気が回ってしまうようです。

(女の子としては、まだまだ全然芽が出そうに無いけど……日常も修行にしようという態度の方は、きちんと身についているようねえ)

 女の子としては壊滅的なジャナの言動に頭を抱えはするものの、修行者として見ればそれもまた喜ばしい……と思ってしまうのですから、なんだかんだ言ってもウバシにとって、ジャナは可愛い弟子なのでした。
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