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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第6章 男装の弟子、女装する
「よく出来たわねえ、ジャナ!!」
「……師範さまっ!!」
温かい拍手の中、二人はぎゅうっと抱き締め合って、くるくる回りました。
……と書くと麗しく聞こえますが、見た目は大木に張り付いて振り回されている蝉です。
「兄さん……目立ち過ぎですぜー……」
歌い終えたビスカスが苦笑しつつも、拍手しながら歩み寄って来ました。
「そおー?それより、見た?ジャナ!!上手だったでしょー!!」
(あー……すっかり、親バカって奴ですねー……)
ビスカスの生温い目に全く気付かず、ウバシはいつもしている様に、ジャナの頭をわしわしと撫でかけました。
いつもはぼさぼさの髪ですが、今日は綺麗に結われています。それを寸前で思い出し、撫で回すのは止めました。
その代わり、踊ってほつれた髪の毛を、撫で付けて耳に掛けてやりました。
師範に世話を焼かれたジャナは、くすぐったそうに首をすくめて、嬉しげな笑顔を見せました。
「や、ほんと、すげかったですよ。もし仕事が無くなったとしても、軽業団が出来んじゃねーですか?」
「そうねー、ジャナ以外の団員は、軽業ってより重業だけどねー?」
ウバシは、抱えていたジャナを下ろしました。ジャナはウバシに向き直って、ぺこりとお辞儀を致しました。
「すごく、楽しかったです……師範さま、ありがとうございました!!」
「んーん!!ジャナが言わなきゃ踊れなかったんだから、こちらこそ、ありがとうだわ!」
「……お歌も、とっても素敵でした!ありがとうございました、ビスカスさん!」
「やー、こんな形でもご一緒出来て、俺も光栄だったぁねー」
「……ジャナ?」
三人がわいわい話していると、耳を蕩かす様な、妙なる響きが少女の名前を呼びました。
「あ!!」
「とっても、素敵だったわ……踊ってくれて、ありがとう」
「……ロゼ姉様っ!!」
いつの間にかそこに美しい花の様に佇んでいたローゼルを見て、ジャナがぴょんと跳ねました。