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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第6章 男装の弟子、女装する
「あああっ!?ローゼルっ!」
嬉しげなジャナとは対照的に、花嫁を見た花婿は何故かひどく慌てました。
「二人は連れて来っからお席で待ってて下せえって、言ったじゃねーですか!」
「……あなたのお喋りが済むのを待ってたら、日が暮れるわ……」
「とにかくっ、座ってっ!」
ビスカスは焦りながらも恭しく手を取って、近くの椅子にローゼルを座らせました。
「お疲れが出たら、明日の大事なお仕事に、障りが出ちまうじゃねーですか……何か、飲みやす?食べたい物は?」
「今は、大丈夫よ。ありがとう」
「まー……恥ずかしい程、ベッタベッタねえ……」
花嫁にかしずいてあれこれと世話を焼く花婿を見て、ウバシは自分の事は棚に上げて苦笑しました。
「そりゃあ、一世一代の、結婚式ですからねー?」
当然とばかりに胸を張る花婿に、花嫁は半分呆れ顔になりました。
「もう……いくらなんでもやり過ぎですわよねえ、師範様。……ジャナ?」
「はい」
「ビスカスがこんな調子だから、私、宴席では踊らせて貰えなかったの。でも、あなたの踊りが、本当に素晴らしくて……お客様も、皆さん大層お喜びだったわ。私も、とても誇らしかった……」
「ロゼねえしゃまっ……」
血の繋がりの無い姉妹の目には、うっすら涙が浮かびました。
「式に来てくれて、踊ってくれて……本当に、ありがとう」
「私の方こしょ……何から何までっ、ありがとうごじゃいましゅっ……」
「……なあ、ジャナ?」
感極まったジャナがローゼルに抱き付こうとしたのを、ビスカスはさり気なく止めました。