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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第6章 男装の弟子、女装する
  *

 結婚式の翌日の、お昼前。

「お世話になりました。有り難うね」

 ウバシとジャナは、ビスカスとローゼルの元を辞去しました。

「やー、お礼を申し上げなきゃならねーのは、こっちでさあ。来て下さって、ほんっと、助かりやしたた」
「大袈裟ねえ……ま、何事も無くて、良かったわ」
「へえ……義兄からも宜しくお伝えするようにってこってした」
「ま、嬉しいわ。また飲みましょって、お伝えして頂戴」

 男二人の別れの挨拶の傍らでは、女二人が別れを惜しんでおりました。

「またいつでも遊びに来てね、ジャナ」
「はい、ロゼ姉様」
「体に気を付けて……無理しないでね」
「はい、姉様も、ご自愛下さい」

 ジャナはローゼルを見て目を潤ませながらにこっと笑い、次にビスカスに向き直って、ぺこりと頭を下げました。

「ビスカスさんも、ありがとうございました」
「おー。しっかり励めよ、ジャナっ娘……じゃねえな、今はもうジャナ坊か」

 今朝ジャナはビスカスに何やら相談していた様子だったのですが、その後なぜかジャナの呼び名が、「ジャナ」だけから「ジャナっ娘」に変わっておりました。

「じゃあ、行くわね。二人とも、お元気で」
「師範様も、お体お大切になさって下さい」
「お達者で、兄さん」

 ウバシとジャナは、窓から二人に手を振りました。そして、遠ざかって見えなくなるまで、お互いに手を振り続けたのでありました。
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