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プロポーズ体験売り出します
第4章 一人目のお客様

                 *

真っ青な空だからか、いつもくすんで見える江の島の海は
光の反射に助けられている。

本日、この天気良き日にプロポーズ体験の初売りを迎えることとなった。
芦田弘恵と我がオフィスから出発し電車を乗り継いで江の島までやってきた。
電車の中では依頼内容とは全く関係のない世間話や
俺の専門学校時代の話なんかで盛り上がった。

「私もデザインの専門学校を出ているのよ」

「そうなんですか。どういう系のデザインなんですか?」

「私はファッションデザインの学校だったの。ファッションデザイナーになりたくてね。
 でも就職したわいいけどあの当時はけっこういい加減な会社が多くって。
 2年で辞めたわ」

「へえ、そうなんだ。え、いい加減って?」

「私が菱沼さんくらいの年頃ってちょうどバブル期だったのよ。
 洋服も売れてる時代だったからすべて勢い任せって感じだったの」

ああ、まさに親父が言っていた事とおんなじだ。
親父の言うことは大袈裟に盛ってるんだと話半分にしか聞いてなかったけど、
同世代である弘恵も同じようなことを言うんだから、
そのとおりなんだなあと納得できた。

「なんだか初対面のお見合い相手みたいね」

笑う弘恵につられて俺も笑ってみたものの、急に現実感でいっぱいになって、
緊張が鼓動を急がせ喉をカラカラに乾かしだした。
そうだ、俺は今日この人にプロポーズをするのだ。
考えに考えぬいたプロポーズのセリフがところどころ消えていく。
おいおい大丈夫か?俺。


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