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プロポーズ体験売り出します
第4章 一人目のお客様
次第に暮れゆく空の色は青から淡いオレンジ色に変わり静かな海面で輝く光も
穏やかな輝きに変化してきた。
砂浜を歩こうと弘恵が先に立って波打ち際に向かって歩き出す。
彼女の背中は陽の光の中で頼りなげに左右に揺れている。
砂に足を取られて歩きづらそうな弘恵に追いつき、
その腕をとって海に向かって歩いた。
「やっぱ海ってドラマの舞台にピッタリだわ」
波の音を聞きながら、次第に水平線に近づいていく太陽を見ながら、
こんな場面で特別な言葉を言う方も聞く方も、その時だけはドラマの主人公になれる。
海って最強だ。
隣に立つ弘恵の横顔が夕日の色にほんのり染まる。
さっきまでは上手く芝居ができるかしらなんて余裕の面持ちでいたのに、
今は少し頬が固まっているように見える。
いよいよプロポーズだ。
助走をつけずにいきなりいこう。
そうでないと俺まで緊張に固まって動けなくなりそうだから。