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第4章 一人目のお客様

その後あいまいな目配せをしてから海に背を向け駅へと歩き出す。
駅に着くと折り返しの特急電車が到着したところだった。
二人掛けの席に座ってから、俺は忘れ物をしていることに気が付いた。

「あ、そうだ、これ渡すの忘れるとこでした」

斜めにかけたショルダーバッグから手のひらサイズの箱を取り出した。

「なあに?開けてもいい?」

弘恵は膝の上でリボンをほどき丁寧に包み紙を開けていく。
箱の中から取り出した、ガラスのケースに入った白いバラの
ブリザーブドフラワーを見て表情を開いた。

「うわぁ、素敵ね」

白いバラの花の部分だけをケースに入れた、小さな小さなブリザーブドフラワーだ。

「これ、プレゼントしてくれるの?」

意外な贈り物に少し驚いた様子の弘恵に、これは我々担当者からですと
まり恵ちゃんからのメッセージカードも渡した。

「芦田さんが記念すべき第一号のお客様なので、ささやかですが
 プレゼントをしたいと上司と二人で選びました。
 白いばらの花言葉に私はあなたにふさわしい、というのがありまして。
 彼はきっとあなたにふさわしい人なんだろうな、と思いまして」
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