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プロポーズ体験売り出します
第5章 二人目のお客様

                 *

 プロポーズ体験当日、午後2時に渋谷ヒカリエの前で絹田彩加と待ち合わせた。
東横線のホームに降り立つとタイミングよく下り特急が滑り込んできた。
混んでいて座ることはできないが、若い俺達には大した苦痛じゃない。
逆に立っている方が電車の揺れに任せて互いの体温を感じたりして、
なんだか本物のデートみたいでやる気さえみなぎる。
前回同様、感動のひと時にしてやるぜ、と心の中で余裕をかました。


「ところでさ、キミは彼女とかいるの?」

さっきまでは天気いいねとか横浜ってよく行くの?とか
当たり障りのない会話が続いていたのに、窓の外に多摩川の流れが見えてきたあたりで
急に彩加が聞いてきた。

「えっ?これから偽でもプロポーズしてくる相手にそれ聞く?」

素っ頓狂な声を返すと、その時の俺の表情が面白かったのか、
彩加が指を揺らして俺を冷かした。

「あ~やっぱいるんだ!ね、どんなコ?かわいい感じ?それともイイ女系?」

「どっちも違う」

「え~?じゃあどんなオンナなのよ」

「どんなもなにも、いま彼女いないから」

「なんで?」

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