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プロポーズ体験売り出します
第5章 二人目のお客様
満腹の腹を擦りながら外へ出ると、少しぬるさを増した風が吹いてきた。
歩きながら目に入ったどでかい観覧車を見上げて、
どうか風が強くなりませんようにと心の中で手を合わせる。
実のところ、俺は高いところはちょっと怖い。何メートルあるんだか知らないが
あのてっぺんに差し掛かったところで風がビューなんて吹いたら
ゴンドラも揺れるんじゃないかとちょっぴりビビっている。
でもそんなみっともない姿を見せることなく堂々と胸を張って、彩加を振り返った。
「あの観覧車に乗りたいんだけど、絹田さん高いとこ大丈夫?怖くない?」
余裕の気遣いを見せたつもりなんだけど、なんだか彼女は人の心を見通せるのか、
「私は平気だけど菱沼君の方こそ大丈夫?」
と横目で軽くあしらわれてしまった。
「俺?俺は平気だよ。一応さ、気遣いを見せてできる男を演出しただけだよ」
エヘンと咳払いをしてからチケット売り場の窓口に千円札を二枚差し出す。
観覧車大人2枚というのと同時にチケットがすっと押し出されてきた。
窓口の女の子に俺らの会話が聞こえていたようで、おつりと一緒に
「どうぞお楽しみください」と満面の笑みを返された。