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プロポーズ体験売り出します
第5章 二人目のお客様
彩加が景色を見ている間にリュックから出して手のひらに包んでいた
小箱を差し出す。
指輪じゃないけど、プロポーズにつきものの小さな箱の登場は、
きっと気分を盛り上げてくれるはず。

プロポーズの言葉中俺の顔を見ないでずっと自身の膝の上の手を
見つめていた彩加は、ゆっくりと顔を動かし俺の手の中の小箱へ視線を移した。
次第に頬を緩ませながら目を伏せる彩加。
すーっと長い息を吐き、そっと手を伸ばして小箱を受け取った。
少しの間余韻に浸るように無言でいた彩加は穏やかな目元で笑みを作り、
かすれた声でありがとうと囁いた。

「・・・やっぱうれしいね・・体験でもこんなにうれしいんだから、
 これが本物のプロポーズだったらもっとうれしいんだろうね・・・」

ビルのガラス窓に反射する夕日の光がやたら目に染みる。
ただ演技をしただけなのに俺の方が涙腺ゆるみそうだ。
彩加も同じように目元を光らせている。

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