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プロポーズ体験売り出します
第6章 いよいよ、3番目のお客様
黙ってしまった水神さんに、すみません、と俺はささやくように謝った。

「いいのよ、菱沼君の言う通りだわ。この指輪だけじゃ大した意味はない・・
 だから、だからね、私が彼に言ってもらいたい言葉を、私が夢見ている言葉を
 あなたに代わりに言ってもらいたいの」

伏せた水神さんの目じりがきらりと光った。
俺は天を仰いだ。
こんなにまで夢中にさせる男って、どんな奴なんだろうって。

「あの・・答えてくれないと思うけど聞いちゃいます。
 相手の男、どんな男なんですか?」

答えないと思った。
ふふっと笑って終わりだと思った。
だけど予想に反して彼女は答えた。

「おたくの社長よ」

「はっ?」

嘘だろ!マジかよ?
そう叫んでも無理はない。もはや仕事だってことを忘れたっておかしくはないよな?
だって、このオフィスの下にあるショップの店員の不倫相手は
自分が勤務する会社の社長だと聞かされれば俺じゃなくたって驚きの声を上げるはずだ。
まり恵ちゃんだって絶対に・・・

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