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プロポーズ体験売り出します
第6章 いよいよ、3番目のお客様
それにしても・・
梶原社長はこのことを知っているんだろうか。
一応if事業部だって社長の管理下にあるわけだし、それに
まり恵ちゃんから社長の耳に入っているかもしれないし。
まあその辺の大人の事情は俺には関係ないけど、プロポーズ代理人担当者としての
俺の立場っていうか、気持ちはどうしてくれるんだよ?やりにくいぞ、きっと。
彼女のこと、ちょっといいなという邪な気持ちを持っている。
その彼女は自分の雇い主と交わっている。
いくら演技演出だって、俺にも感情はあるんだ。
かなりコントロールしなけりゃやってらんないぜ・・


完全に仕事意識が飛んじまって黙りこくってからどれだけの時間が過ぎていたんだろう。
食器の奏でた音に顔を上げた途端に唇に何かが押し付けられた。
ビクッと腰が浮いた。
それは俺がコーヒーと一緒にだしたクッキーだ。

「大丈夫?生きてる?固まって石像にでもなっちゃったのかと思って
 生き返らせようとしたのよ」

自身もクッキーを咥えて目を細めて笑っていた。
水神さんの咀嚼の音に合わせるように俺もクッキーを口の中に滑り込ませかみ砕く。
そうだな、俺が深刻に考えたって意味がないんだ。
これはあくまでも商品、商売なんだと割り切って、彼女の望みを叶えてやろうじゃないか。

「すみませんでした。水神様が100パーセント満足できる商品を作り上げますので、
 さっそく話をつめていきましょう」

「お願いします」

いつものきりっとした表情に戻った水神さんは、迷いのない瞳でまっすぐに俺を見た。

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