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プロポーズ体験売り出します
第6章 いよいよ、3番目のお客様
歯の浮くようなセリフを聞いた瞬間まり恵ちゃんは、視線を斜めに落とし鼻で笑った。
息遣いは完全に人を見下しているような、スカスカしたものだった。

「なんか、単純っていえば単純な言葉だし、そんなに心に突き刺さるような 
 セリフだとははっきり言って俺には思えないんですけどね」

数いる女の中でお前が一番だって言われたところで
その数いる女が減るわけでもないだろうに。
不倫っていうんだからそもそも社長には奥さんがいて、さらには
水神さん以外にも愛人がいるような口ぶりだった。
そんな男に求められて何が嬉しい?
俺にはちっとも理解できねえ。きっと一生、解らねえ。

「そうね、菱沼君の言う通り。なんだけど、
 それがわからなくなってしまうのが恋なのよ。こればっかりは理屈じゃないのよ・・」

まり恵ちゃんの瞳を覗き見る。
さっきまでガラス玉だった黒目には水面が波打っている。
きらきらと息を吹き返したように、穏やかな微笑みの真ん中で輝いていた。


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