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プロポーズ体験売り出します
第6章 いよいよ、3番目のお客様
俺のあきれ顔を見てもしらっとしている水神さんの言い分はこうだった。

「彼ね、いつも高級な感じの店しか連れて行ってくれないの。
 カジュアルな店って言ってもおしゃれさばっかり際立つような店とか。
 普通のね、ファストフードとか縄のれんの一杯飲み屋とか
 そういうところだって十分なのに・・不倫の後ろめたさ、ううん、
 カッコつけのためなのか、気を使いすぎてるのよ」

彼女の不倫相手は会社の社長。小さい会社だろうが社長は社長。
その見栄は何人もの愛人たちを満足させるための労力となっているんだろうけど、
そんなことしたって所詮は不倫。
いつかはシャボン玉みたいに壊れて消えるのに、
手にしている間はやれるだけのことはやるってか?
めんどくせえことよくやるよ、と心の中だけで吐き捨てた。

「えー菱沼君は他のところがいいの?」

「いや全然オッケーっすよ。よし、じゃあ行きますか」

なんか今日は行き当たりばったり的な感じがいいみたい。
俺の考えていたプランも変更しよう。

246沿いに立ち並ぶビルの切れ間から時折顔をのぞかせる、あの
赤くて高い場所をプロポーズ体験の舞台にしよう。






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