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プロポーズ体験売り出します
第6章 いよいよ、3番目のお客様

 平日ということもあって、展望デッキは程よいざわつきに包まれていた。
ガラスに駆け寄る水神さんは、まるで遠足に来た子供のように
俺に大きな動作で手招きした。

「ねえすごいね!東京ってこんなにビルでぎゅうぎゅうだったんだね。
 あっちが私たちの仕事場かな?」

彼女が指さす方向はまさに俺たちの日常の場。
あのごちゃごちゃとした建物の足元で、俺たちは毎日働いている。
仕事だけじゃない。食べて、歩いて、人との縁を紡いで、
日々生活しているのだ。

「こうやって見下ろすと・・俺達ってちっぽけな存在だけど、
 そのちっぽけな存在が無ければ世の中は動かないんだよね」

柄にもなく真面目くさったセリフを吐いた俺に、
水神さんは笑うこともからかう事もなく静かに肯いた。

「そうね・・ちっぽけな存在・・・だけど誰かにとって必要な存在であることは
 間違いない・・私も彼にとって必要な存在なんだって、それが私の幸せ」

その時の水神さんの横顔はきれいだった。
雲の切れ間から漏れる日の光に負けないくらい輝いていた。
純粋は心の持ち主だと思った。
と同時に相手の男を、梶原社長を許せないと思った。
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