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プロポーズ体験売り出します
第6章 いよいよ、3番目のお客様
3度目にして体験ぶち壊しというとんでもない契約違反をしてしまった。
いくら今は新規の予約はとっていないとはいえ、この報告で俺は
かなりまずい立場になることは間違いない。
もしかしたらクビになるかもしれない。
だけど、幸せだとはどうしても思えない水神さんの恋を、
そのまま時間だけが過ぎるような無駄な恋を続けさせたくなかった。

たぶん、まり恵ちゃんも社長のオンナだ。
他に何人いるか知らないけど、まり恵ちゃんと水神さん二人が幸せから
遠のいているのが嫌だった。
大切な人たちがつらい思いをしているのを黙ってみていられなかった。だから・・

「勇気があるのね、菱沼君は」

目を合わせられなくてずっとビルに邪魔されて見えない地平線を探している俺の
耳に届いたのは、丸みを帯びた水神さんの優しい声だった。
顔を向けると、切れ長の目じりからすっと涙が滑り落ちるのが見えた。

「正直言うとね、私自身ももうこれ以上不倫を続けても 
 私の人生になんの意味もないんだからどこかで止めなきゃって思っているの。
 でも気持ちがグラグラぐらつくばっかりで。
 新しい道への一歩を踏み出したい、けどそれができずにいる・・
 そんな気持ちをね、中野さんと語り合ったの」
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