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蝶々と甘い蜜。
第6章 蝶が羽ばたくとき
家について、ソファに座って目を瞑っていると
携帯の着信音がなって、バックの中から急いで携帯を手に取ると
表示されている名前は『三島』だった。


「何で……」


もう終わりって言ったよね?
もしかして3か月早いから契約違反だっていうの?


やっと落ち着いていた呼吸がまた早くなっていくのが分かる。
呼吸って……どうするんだっけ?


迷って、迷って……迷っているうちに
携帯の着信音は消えた。


これでいい。
これで三島のことを少しづつ忘れていけばいい。
三島の携帯の番号を消して
クローゼットを勢いよく開けて
三島と会う時に着ていた服をごみ袋にいれていく。


「スーツしかないじゃん……」


10年間会い続けていたのだから、残っているのはスーツだけ。
10年の月日の重みを知った……
下着もアクセサリーも靴もバッグも全部捨てて
新しいのを買おう。


ありがたいことなのか
普通のカップルなら携帯に写真とかもたくさん思い出が残っているだろう。
だけど、私と三島には写真が1枚もなければ
プレゼントされたものは現金だけ。
10年付き合ったわりには捨てたい思い出は少ない。

私と三島の間に思い出の物は確かに少ない。
だけど……三島は私の身体にたくさんの思い出をつけている。


「んっ……」


シャワーを身体にあてるだけで敏感になってしまった肌
くすぐったくて声が自然と漏れてしまう。


もう、三島にこれから触ってもらうことはない。
そう思ったら、ないものねだりで身体が急にほてってくる。
これから自分で……慰めるしかないのだろうか。


「あっ……ふっんっ……ふあっ…」


シャワーを強めにして自分が一番感じるところにあててみる。
三島がいなくたって……私は自分で慰めることができる。
だから、今、羽ばたくときなんだ。

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