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蝶々と甘い蜜。
第8章 【三島編】愛する人
自分で言うのもなんだが、俺は器量はいいほうだと思う。記憶力もいいし、見た目も悪くもないほうだ。だけど……。
「元気になってよかったね。何がしたい?」
「ママとパパと一緒に川の字で寝たい!」
「ふふ、一緒に手を繋いで寝ようね。」
「うん!」
退院したばかりの子供が母親に甘えている姿が、俺には羨ましい。俺の母親は20歳の時に亡くなった。もう母親を恋しがる年齢ではないというのに…男はマザコンだというけど本当にそう思う。
厳しい父親に周りの大人たちの重圧を、全部母親に聞いてもらっていた。俺の誰にも見せない心の中を、本当の俺を見せられる唯一の人だった。
『恭弥、今日であなたは大人ね。この日を迎えることができてよかった。あなたのその姿を見れてよかった。』
『母さん、そんなこと言わないで。大丈夫、少しづつだけどよくなるから。』
本当はもうよくはならない。余命も宣告された。だけど、母さんにそんなことを言いたくなかったし、認めたくもなかった。あと三か月しか母さんと一緒に過ごせれないなんて……
『ふふ、あなたは本当に優しい子ね。』
病気になってからも、母さんは化粧だけは必ずしていた。頬はこけてしまったけど、それでも綺麗な母さんだった。ただ、ルージュだけ……病気が進行すればするほど、赤い色になっていった。
だからなのか、今でも真っ赤なルージュは好きではない。
「元気になってよかったね。何がしたい?」
「ママとパパと一緒に川の字で寝たい!」
「ふふ、一緒に手を繋いで寝ようね。」
「うん!」
退院したばかりの子供が母親に甘えている姿が、俺には羨ましい。俺の母親は20歳の時に亡くなった。もう母親を恋しがる年齢ではないというのに…男はマザコンだというけど本当にそう思う。
厳しい父親に周りの大人たちの重圧を、全部母親に聞いてもらっていた。俺の誰にも見せない心の中を、本当の俺を見せられる唯一の人だった。
『恭弥、今日であなたは大人ね。この日を迎えることができてよかった。あなたのその姿を見れてよかった。』
『母さん、そんなこと言わないで。大丈夫、少しづつだけどよくなるから。』
本当はもうよくはならない。余命も宣告された。だけど、母さんにそんなことを言いたくなかったし、認めたくもなかった。あと三か月しか母さんと一緒に過ごせれないなんて……
『ふふ、あなたは本当に優しい子ね。』
病気になってからも、母さんは化粧だけは必ずしていた。頬はこけてしまったけど、それでも綺麗な母さんだった。ただ、ルージュだけ……病気が進行すればするほど、赤い色になっていった。
だからなのか、今でも真っ赤なルージュは好きではない。