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蝶々と甘い蜜。
第10章 切ない想い
「もう一眠りしていて。すぐ戻るから。」


そういって奥様は私と甲斐を三島の病室から追い出した。
何も異常はなかったんじゃないの……?
三島は本当に私のことを覚えていないの?


「あなたのこと覚えていないみたいね。」


「どこにも異常はないって……」


「車に守られただけですごい衝撃だったから……よかったじゃない、忘れてもらえて。」


「え…?」


「これであなたも前に進めるでしょう。あの人もあなたのことを覚えていないからどうしようもないじゃない。」


「だけど…!」


「私が今こうしてそばにいるのに、あなたがあの人のそばにいる必要がある?」


奥様が三島のそばにずっといたら……
きっと三島と出会うことなんてなかっただろう。
それだけ世界が違う人だ。
だけど……やっぱりどこかで信じたい。
それでもどこかで出会っているって。


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