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蝶々と甘い蜜。
第10章 切ない想い
「奥様……では、結衣さんのことが分からないというのは……」
「記憶障害は嘘よ。覚えているわ、ちゃんと。」
「なぜ、そんなことを!結衣さんもせっかく代表に気持ちを伝えに来たというのに……」
「……彼女のことが大事だからこそ…だ。自分の幸せよりも相手の幸せを願う。甲斐ならきっと私の気持ちを分かってくれるだろう。」
「それは……」
甲斐の気持ちはずっと分かっていた。妻のことを愛しているということ。ずっと気持ちを押し殺して傍で見守っていたことを。
「……結衣と会えない時間、一人になるといつも彼女のことを考えていた。妻と同じ名前、同じ誕生日、出会った時の年齢の妻を忘れないように抱いていたはずが……だけどいつの間にか、結衣と名前を呼んでもどっちの名前を呼んでいるかわからなくなってしまった。」
「それなら、なおさら今すぐ結衣さんを追いかければよろしいじゃないですか!」
「彼女の20代を、私はダメにしてしまった。彼女の30代を台無しにしたくない。元々終わる関係だったのだから。私のことなんか忘れて飛び立ってほしい。」
「……奥様はこれからどうなさるおつもりなんですか?」
「……私の気持ちは全部伝えた。だけど、私が泣いても叫んでも振り向いてくれないこともわかった……私より年下のあの子が、相手の幸せを想って飛び立ったから、私も前を向こうと思う。これを出してくるけど、いい?」
「記憶障害は嘘よ。覚えているわ、ちゃんと。」
「なぜ、そんなことを!結衣さんもせっかく代表に気持ちを伝えに来たというのに……」
「……彼女のことが大事だからこそ…だ。自分の幸せよりも相手の幸せを願う。甲斐ならきっと私の気持ちを分かってくれるだろう。」
「それは……」
甲斐の気持ちはずっと分かっていた。妻のことを愛しているということ。ずっと気持ちを押し殺して傍で見守っていたことを。
「……結衣と会えない時間、一人になるといつも彼女のことを考えていた。妻と同じ名前、同じ誕生日、出会った時の年齢の妻を忘れないように抱いていたはずが……だけどいつの間にか、結衣と名前を呼んでもどっちの名前を呼んでいるかわからなくなってしまった。」
「それなら、なおさら今すぐ結衣さんを追いかければよろしいじゃないですか!」
「彼女の20代を、私はダメにしてしまった。彼女の30代を台無しにしたくない。元々終わる関係だったのだから。私のことなんか忘れて飛び立ってほしい。」
「……奥様はこれからどうなさるおつもりなんですか?」
「……私の気持ちは全部伝えた。だけど、私が泣いても叫んでも振り向いてくれないこともわかった……私より年下のあの子が、相手の幸せを想って飛び立ったから、私も前を向こうと思う。これを出してくるけど、いい?」