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ソレは、そっと降り積もる・・・。
第15章 障害物狂想曲━ アジタート ━
「判りました。」
執事のあとに男も返事をして一緒に部屋を出た。
「ジュリアスさま。私を敵にしたことを後悔なさいませ。」
自分を見ることない婚約者に宣戦布告をしたのだった。
《 《 *
人には、多かれ少なかれ〝善意〟と〝悪意〟が混在している。絶対的な〝善〟は、なく。絶対的な〝悪〟もない。
それぞれが一つの内の中で日々鬩《セメギ》ぎ合って存在している。しかしふとした瞬間にどちらかの割合が増してしまうと〝善悪〟のシーソーは、崩れてしまうのだ。
そんなことをずっと知ったつもりで生きてきた。貧しい暮らしの中で〝知った気に〟なっていたのだ。
しかし私は、本当に世間知らずな人間だった。
所詮私は、クモの巣の端に運悪く引っ掛かってしまっただけの存在。上手くすれば逃げ出せるかもしれない・・・そんな位置に私は、居るのだと初めて気が付いた。