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ソレは、そっと降り積もる・・・。
第35章 邪心の潔白
やり取りを静かに傍観していた母が声を発した。
「もう、自由にしてあげましょう。この子が帰って来たくなったらいつでも迎えてあげればいいのよ。」
「お母さん・・・」
普通から貧困へと落ちて〝逃げ出したい〟と思ってきた自分が恥ずかしくなった。両親は、きちんと子供《ワタシ》たちに悪いと思ってくれていたのだ。
親の所為で環境が変化し生活が苦しくなったことでアルバイト三昧になったことをきちんと考えてくれていたのだと知って胸のつかえが取れた気がした。
「そうだな・・・子どものわがままだと思っていたが、いつの間にこんなに大きくなっていたのか。」
「お父さん・・・」
切ないようななんとも言えない瞳を向けて控えめに微笑みながら父が頭を撫でてくれた。その温もりに〝この両親が好きだと〟、思えた。