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チカちゃん先生のご褒美
第9章 チカ先生の卒業
「……これ、っ……」
『二人とも、ここに、来て……』
聞こえて来たのは、自分の声だった。
『……汚れちゃうでしょ?出ちゃったら』
多少こもって聞こえにくいけど、間違いない。
これ、「ご褒美」の時の、私の声だ。
「……これ……どうして……」
「……記念?って言うか、私的な利用の為?」
『うぉおおっ……先生っ、すげぇ……』
『あああ、いいよっ、いい、チカちゃんっ』
『あっ……んっ……ん、』
『っ出るっ……チカちゃん、かけさせてっ……』
「!」
聞こえて来た、どう考えても言い訳なんか出来ない位いかがわしい遣り取りに、絶句した。
(これを……私的な利用、って……)
想像なんかしていないのに、体が、かぁっと熱くなる。
「……そんな……こんなの、勝手に……」
「あの時、自分の声を録ろうと思ったんだけど、偶然入っちゃったみたいでさー」
「偶然、って……」
急に甦ってきた、あの頃の──言われるがままに生徒といやらしい事をしてた、考え無しの自分。
ちょうど電車が揺れたのも有って、ふらっとして、内川くんに抱き留められる。
「おっと。大丈夫?」
「……ぁ……」
そのまま、支えるみたいに、腰を抱かれる。
……こんな風に、されるがままになってちゃ、だめだ。
そう、思うのに……。
「気にしなくて良いよ、もたれてて」
「……ゃ……」
あまりに突然に突きつけられた過去へのショックで、体が思うように動かない。
「それにしても、野際ってバカだよな……そう思わない?」
内川くんは、私を抱き寄せて、くすっと笑った。
「子供じゃないんだし、ちゃんと考えてから行動しないと」
「……っ……」
『証拠、あんの?』
『お前、あれが俺らの妄想じゃなかったって証拠、持ってんのかよ』
野際くんは、証拠なんか持ってなかった。ただ、私のしたことを今になって逆手に取って、「ご褒美」を求めて来ただけだ。
でも、内川くんは。
「先生、顔色悪いよ?飲み過ぎた?」
内川くんを見上げてみて、ぞくっとした。
心配そうに言う顔からは、何の悪意も感じられない。
「……次の駅で、降りちゃおっか?」
指を絡めて手を繋がれて、何も言えず、振り解く事も出来なくて。
私は内川くんに手を引かれるまま、次の駅で開いたドアから、ホームに降りた。