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チカちゃん先生のご褒美
第9章 チカ先生の卒業
「ふーん。こんなシンプルな部屋も有るんだ」
「……来たこと無いの?こういう」
「無いよ」
口籠もる内川くんを、遮る。
太郎さんとするのは、太郎さんの家か職場か、どっちかだから。私の部屋ですら、無い。
「……無いのに、良いの?」
「別に。」
──内川くんの目的が野際くんと同じなら、どこで話しても、最後にここに来る事になるんでしょう?
「話すだけだから、休憩っていうので良いよね?」
言いたい言葉を飲み込んで、わざとそう言って、私は、一番シンプルな部屋を選んだ。
*
「とりあえず、水は飲んだら?」
「ありがと」
水を渡されて、一口飲んだ。
「食べ物は……要らないか」
「うん」
内川くんが、眺めていたメニューを畳む。
「それより、さっきの続き聞かせて」
「さっきの?」
「鈴木先生のご褒美って、何?」
「あー……」
内川くんが気まずそうに目を逸らす。
「話して。その為に……誰にも邪魔されないでゆっくり話をする為に、わざわざここに来たんだから」
冷蔵庫から出されたばかりでひんやりしている水のボトルを手で弄びながら言う。
内川くんは困った様な顔をして、私と同じ水を開けて一口飲んだ。
「……鈴木が、女子にヤってた事だよ」
……ああ。
「ご褒美」って、そっちだったんだ。
「男にご褒美やんのはチカちゃんで、女には、鈴木だったんだろ?」
内川くんはもう一度、もっとはっきり言った。
「それ、どうして」
「見たんだよ」
こっちを見ずに、怒った様に、吐き捨てるみたいに、内川くんが言う。
ドラマか何かみたいに、現実味が無い。
「正確には、見たんじゃなくて声とか音とか聞いたんだ。最初は、勘違いじゃないかって思った」
『……っ……ぁ、ぃっ……!』
頭の中に、女の人のくぐもった喘ぎ声が甦って、内川くんの声が、遠くに聞こえる。
……変なの。
すごく前に聞いた声の方がはっきり思い出せて、今目の前に居る人の声の方が、遠いなんて。
「……何度かあったんだ、そういう事。それにチカちゃんのご褒美の事も有って、そういう事なのかって分かった」
『ぁ、ん……せんせっ、っ!』
声だけじゃなく、プリーツスカートから出た白い脚が、空中でがくがく揺れていたのも一緒に思い出す……上履きが散らばってたのも、髪が机に広がってたのも。
「……来たこと無いの?こういう」
「無いよ」
口籠もる内川くんを、遮る。
太郎さんとするのは、太郎さんの家か職場か、どっちかだから。私の部屋ですら、無い。
「……無いのに、良いの?」
「別に。」
──内川くんの目的が野際くんと同じなら、どこで話しても、最後にここに来る事になるんでしょう?
「話すだけだから、休憩っていうので良いよね?」
言いたい言葉を飲み込んで、わざとそう言って、私は、一番シンプルな部屋を選んだ。
*
「とりあえず、水は飲んだら?」
「ありがと」
水を渡されて、一口飲んだ。
「食べ物は……要らないか」
「うん」
内川くんが、眺めていたメニューを畳む。
「それより、さっきの続き聞かせて」
「さっきの?」
「鈴木先生のご褒美って、何?」
「あー……」
内川くんが気まずそうに目を逸らす。
「話して。その為に……誰にも邪魔されないでゆっくり話をする為に、わざわざここに来たんだから」
冷蔵庫から出されたばかりでひんやりしている水のボトルを手で弄びながら言う。
内川くんは困った様な顔をして、私と同じ水を開けて一口飲んだ。
「……鈴木が、女子にヤってた事だよ」
……ああ。
「ご褒美」って、そっちだったんだ。
「男にご褒美やんのはチカちゃんで、女には、鈴木だったんだろ?」
内川くんはもう一度、もっとはっきり言った。
「それ、どうして」
「見たんだよ」
こっちを見ずに、怒った様に、吐き捨てるみたいに、内川くんが言う。
ドラマか何かみたいに、現実味が無い。
「正確には、見たんじゃなくて声とか音とか聞いたんだ。最初は、勘違いじゃないかって思った」
『……っ……ぁ、ぃっ……!』
頭の中に、女の人のくぐもった喘ぎ声が甦って、内川くんの声が、遠くに聞こえる。
……変なの。
すごく前に聞いた声の方がはっきり思い出せて、今目の前に居る人の声の方が、遠いなんて。
「……何度かあったんだ、そういう事。それにチカちゃんのご褒美の事も有って、そういう事なのかって分かった」
『ぁ、ん……せんせっ、っ!』
声だけじゃなく、プリーツスカートから出た白い脚が、空中でがくがく揺れていたのも一緒に思い出す……上履きが散らばってたのも、髪が机に広がってたのも。