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チカちゃん先生のご褒美
第9章 チカ先生の卒業

「今日来てた中にも何人か居たよ、鈴木に『ご褒美』貰ってた奴」
「……そっか」

 そっか。
 あそこに居たんだ、太郎さんに「ご褒美」貰った子。

「知ってたの?チカちゃんも」
「内川くんと同じだよ」

 なんだか息苦しいと思ったら、息を止めて話を聞いてたみたい。
 私は、ふーっと、溜め息みたいな深呼吸をした。
 

『しーっ…………君も、しーっ、ね』


「生徒だった頃、見ちゃったんだよね。鈴木先生が先輩に準備室で、『ご褒美』をあげてるの」
「そんなに前からなのかよ。サイテーだな」
「……サイテーなのは、私もおんなじ」

 おんなじだ、人のことなんか責められない。
 同じような事を、してたんだから。

「あなた達に『ご褒美』あげたらって私に言って来たのは、鈴木先生なの。」
「え」
「でも、その提案を断らないで乗ったのは、私。二人とも、おんなじくらい、サイテーだよね」
「……それ、おかしいだろ?!」

 内川くんが、怒鳴った。

「おかしいかな?」
「おかしいって、思わなかったの?!その時、もう付き合ってたんだよね?彼女に別の男とヤれって言ってるみたいなものじゃねえの?!」

 ……そうだよね。
 おかしいよね、よく考えたら。

「そうだね……でも、その時は、なんとも思わなかったの。鈴木先生もそうしてたのを、知ってたからかな……でも、」
「でも?」

「でも、今もまだしてるって、思ってなかった」

 言ってみてから、思った。
 違う。
 思ってなかった訳じゃない。

 今もまだしてるって、思いたくなかった……だ。

 そうかもしれないって、思った事は有った。

 内川くん達の代だけじゃなく、太郎さんに対する態度がなんとなく気になる子が、毎年何人か居たりしたから。
 だけど、単に生徒に好かれてるだけだって、見る度に自分に無理やり、言い聞かせてた。

 内川くんが同級生と太郎さんの「ご褒美」を見た──聞いた、って事は。
 私が内川くんたちにご褒美をあげてた頃に、太郎さんは女の子達に、ご褒美をあげてたって事だ。
 私を抱きながら、他の子も抱いてた、っていう事だ。
 そんなこと、今更はっきり思い知らされたって、別に何とも思わない。
 太郎さんには、仕事だったんだろう。私にさせるご褒美も、太郎さんのするご褒美も。
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