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チカちゃん先生のご褒美
第8章 知佳先生の奮闘
「ごめん、お待たせー。何の用?」
先輩が開けっ放しにして行った戸を閉めてたら、衝立の向こうから白衣が覗いた。
「あ、これ……宮地先生から、渡すようにって」
「あー、ありがとね!お疲れ様、もう帰っていいよー」
「あのっ、先生っ!」
あっさりファイルを受け取って、衝立の向こうに戻ろうとする先生を、引き止めた。
「ん?何?」
「えっと……いまのっ……」
「今の?」
白衣の先生はこっちに向き直って、またごく普通ににっこり笑った。
「何?今のって」
「え……」
「新入生さん、お名前は?」
答えに困っていたら、また質問された。
「……山田、知佳です……」
「ヤマダチカさんね。これ、宮地先生から預かって来たって事は……二組?」
「はい。」
先生はファイルを持って、壁にぴったり付けられたキャビネットに寄りかかり、相変わらずにこにこと聞いてくる。
「ふーん、二組かー。……で、今のって、何だっけ?」
「えっ?……あの……三年生、が」
三年生が、先生と……やらしいことしてました、なんて、言えない……。
「三年生が何?」
「そこの……机に、寝てて……」
「証拠ある?」
下を向いて喋ってたら、上から声が降ってきた。
「証……」
「証拠が無いと、証明出来ない。証明出来ない物は、無いと同じだねー?……じゃ、お疲れ様」
先生が手を振って、衝立の向こうに消えたので。
私は、無言でそこを出た。