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チカちゃん先生のご褒美
第9章 チカ先生の卒業

   *

「二次会行く人ー」

 戻った後は、特にトラブルも無く。
 全員の近況を聞いたりしているうちに、会はお開きになった。

「チカちゃん、二次会行こ!」
「ありがとう。今日は、遠慮しとく」
「えーっ!」

 居酒屋の外で、華やかな女の子達に、口々に引き止められる。

「明日休みだよね?」
「休みだけど、用事有るんだ。ごめんね」
「残念ー!今度は絶対ね!」
「……うん。今度ね」

 有るのか無いのか分からない「今度」を、来週の予定みたいに軽く約束する。

「今日は、ありがとう。すごく楽しかった。みんなが成長して大人になってるの見て、嬉しかった……しっかり関わった、最初の生徒だから」

 周りに居た子たちにそう言うと、みんなくすぐったそうに笑った。

「またね。次に会うの、楽しみにしてる」
「うん!元気でね、チカちゃん」

 移動し始めた二次会組に手を振る。
 ほとんどみんな、流れてくみたいだった。

「チカちゃん」

「野際くん」

 呼ばれて振り向いたら、野際くんが居た。
 あの後、ずっと離れたところでお酒を飲んでたから、このままお別れだと思ってた。

「さっき、ごめん。……その……色々?」
「……うん」

 野際くんの目は、相変わらず赤かったけど。その表情は、やんちゃだけど素直なとこも有る生徒だった頃に戻ってた。

「俺、まずはちゃんと勉強して、卒業するわ。チカちゃんのしてくれた事、無駄にしない様に」
「……うん。」
「そんだけ。またな」
「うん。またね」
「次会う時は、社会人になってるからな!」

 野際くんはぴょこっと頭を下げて、二次会組の方に走って行った。

「……帰ろ。」

 私は野際くんに手を振ると、二次会組に背を向けて、駅に向かって歩き始めた。

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