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僕の美しいひと
第1章 春の野良猫
食事を済ませると、郁未は清良を再び寄宿舎に連れて行った。
女子寮は一階で、男子寮は二階だ。
…もう消灯時間は過ぎているので、廊下に小さな灯りが灯っているのみで、辺りは静寂に包まれていた。
廊下の突き当たりが最上級生の部屋だ。
「…この三月に最上級生の女子生徒が卒業したから、君が唯一の高校生だな。
…さあ、入りなさい」
促すと、中に入るなり清良は歓声を上げた。
「…わあ!綺麗な部屋!この部屋、あたし一人で使っていいの?」
「ああ。狭いけれど、ベッドに机、クローゼットも付いているから好きに…」
清良が不意に抱きついてきた。
「嬉しい!あたし、自分の部屋に住むの初めて!
自分だけの家具なんて初めて!ありがとう!郁未!」
柔らかでほっそりとした少女の身体が押し付けられる。
…甘い花のような薫り…。
郁未はどきりとし、慌ててその身体を押しやる。
「ちょっ…女の子がそんな風に男に抱きついてはいけない。誤解されるだろう」
「誤解って?」
黒く濡れた瞳が瞬きもせずに郁未を見上げていた。
郁未はため息を吐き、言いにくそうに口を開いた。
「…男は皆、狼なんだよ。君みたいに男を挑発するような真似をしたり、触れたりしたら勘違いして誤解を生むんだ。
危ない目に遭ってからじゃ遅いんだよ」
「あんた、あたしが男にヤラれないか心配しているの?」
額を抑えて瞼を閉じる。
「お願いだからそんな風に露骨な表現をしないでくれないか。ここには小さな子どもがたくさんいるんだ。
笙子さんだってびっくりする」
「ふうん…。笙子さんねえ…」
にやにやしながらこちらを見る清良に、郁未は咳払いをしつつ、思い切って尋ねた。
「…女の子にこんな不躾な質問をするのは、僕の本意ではないのだけど…大事なことだから聞くよ。
…君は…その…男性と…そういう…関係に…」
清良は、ああ…と綺麗な眉を跳ね上げ、さらりと答えた。
「あたしが処女かどうかってこと?」
「き、清良!」
「何、赤くなってんの。可愛〜い」
くすくす笑いながら、あっさりと首を振る。
「処女だよ。何回か襲われそうになったこともあったけど、半殺しの目に合わせてやったよ。
別に大切に守っているわけじゃないけど、クズ野郎にヤラれるなんて、死んでもごめんだからね」
…聞くに耐えない酷い言葉の連続ではあったが、郁未は心底ほっとした。
女子寮は一階で、男子寮は二階だ。
…もう消灯時間は過ぎているので、廊下に小さな灯りが灯っているのみで、辺りは静寂に包まれていた。
廊下の突き当たりが最上級生の部屋だ。
「…この三月に最上級生の女子生徒が卒業したから、君が唯一の高校生だな。
…さあ、入りなさい」
促すと、中に入るなり清良は歓声を上げた。
「…わあ!綺麗な部屋!この部屋、あたし一人で使っていいの?」
「ああ。狭いけれど、ベッドに机、クローゼットも付いているから好きに…」
清良が不意に抱きついてきた。
「嬉しい!あたし、自分の部屋に住むの初めて!
自分だけの家具なんて初めて!ありがとう!郁未!」
柔らかでほっそりとした少女の身体が押し付けられる。
…甘い花のような薫り…。
郁未はどきりとし、慌ててその身体を押しやる。
「ちょっ…女の子がそんな風に男に抱きついてはいけない。誤解されるだろう」
「誤解って?」
黒く濡れた瞳が瞬きもせずに郁未を見上げていた。
郁未はため息を吐き、言いにくそうに口を開いた。
「…男は皆、狼なんだよ。君みたいに男を挑発するような真似をしたり、触れたりしたら勘違いして誤解を生むんだ。
危ない目に遭ってからじゃ遅いんだよ」
「あんた、あたしが男にヤラれないか心配しているの?」
額を抑えて瞼を閉じる。
「お願いだからそんな風に露骨な表現をしないでくれないか。ここには小さな子どもがたくさんいるんだ。
笙子さんだってびっくりする」
「ふうん…。笙子さんねえ…」
にやにやしながらこちらを見る清良に、郁未は咳払いをしつつ、思い切って尋ねた。
「…女の子にこんな不躾な質問をするのは、僕の本意ではないのだけど…大事なことだから聞くよ。
…君は…その…男性と…そういう…関係に…」
清良は、ああ…と綺麗な眉を跳ね上げ、さらりと答えた。
「あたしが処女かどうかってこと?」
「き、清良!」
「何、赤くなってんの。可愛〜い」
くすくす笑いながら、あっさりと首を振る。
「処女だよ。何回か襲われそうになったこともあったけど、半殺しの目に合わせてやったよ。
別に大切に守っているわけじゃないけど、クズ野郎にヤラれるなんて、死んでもごめんだからね」
…聞くに耐えない酷い言葉の連続ではあったが、郁未は心底ほっとした。