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僕の美しいひと
第3章 じゃじゃ馬ならし
「とんだお転婆娘だな、あの子は…」
授業を終え院長室に戻るなり、鬼塚は肩をそびやかした。
郁未は書類から眼を上げ、尋ねる。
「清良?どうだった?あの子の学力は」
「尋常小学校しか出ていなかったらしい。
読み書き計算は巧みだが、それ以上の知識と教養は皆無だ。
中学教材からスタートだな」
「うん」
当然だろう。
母子家庭の相当貧しい生活だったらしい。
読み書き計算が出来ているだけましというものだ。
「…だが、恐ろしく頭がいい。
分からないなりに質問が鋭い。
俺がたじたじになるくらい難しいことを聞いてくる」
鬼塚には珍しい感嘆の言葉が続いた。
「へえ…」
少し嬉しくなり、郁未は微笑んだ。
そんな郁未に眉を跳ね上げて見せ、目の前に立つ。
「…だが言葉遣いと礼儀作法がまるでなっていない。
俺をオヤジ呼ばわりするわ口答えするわ肘は付くわ…。
…おい、笑い事じゃないぞ」
その様子が容易に想像できて、郁未はくすくす笑った。
「ごめんごめん。
…わかったよ。僕が補習と言葉遣いや礼儀のレクチャーをしよう。
鬼塚くんは中学教材からの指導を頼む」
鬼塚はやや不思議そうな眼をした。
「…お前、なんだか楽しそうだな?」
「え?そう?」
自分では全く自覚していないことを言われ、思わず聞き返す。
「ああ。
楽しそうだし、随分と熱心だ。
…どうした?」
郁未はわざと音を立てて書類を整理する。
「別に…。
楽しいわけじゃない。
僕は粗野な子は嫌いだし、あの子には昨日からため息の吐きっぱなしだよ。
でも、あれくらいのじゃじゃ馬だと逆に闘争心が湧くからさ。
…それに…あの子を淑やかな女性に矯正できたら、この学院の名声も上がるだろう?
良い職場にも就職できるだろうし…もしかしたら、良い家庭から養女の話も来るかもしれない」
「まあな。…あの行儀の悪さを割り引いても、驚くくらい美人だからな」
鬼塚が神妙に頷いた。
それに力を得たかのように、郁未は立ち上がり宣言する。
「そうさ。だから僕は清良を徹底的に教育し直す。
…誰もが驚き、思わず振り返るような優雅で上品で美しい最高のレディにしてみせる」
授業を終え院長室に戻るなり、鬼塚は肩をそびやかした。
郁未は書類から眼を上げ、尋ねる。
「清良?どうだった?あの子の学力は」
「尋常小学校しか出ていなかったらしい。
読み書き計算は巧みだが、それ以上の知識と教養は皆無だ。
中学教材からスタートだな」
「うん」
当然だろう。
母子家庭の相当貧しい生活だったらしい。
読み書き計算が出来ているだけましというものだ。
「…だが、恐ろしく頭がいい。
分からないなりに質問が鋭い。
俺がたじたじになるくらい難しいことを聞いてくる」
鬼塚には珍しい感嘆の言葉が続いた。
「へえ…」
少し嬉しくなり、郁未は微笑んだ。
そんな郁未に眉を跳ね上げて見せ、目の前に立つ。
「…だが言葉遣いと礼儀作法がまるでなっていない。
俺をオヤジ呼ばわりするわ口答えするわ肘は付くわ…。
…おい、笑い事じゃないぞ」
その様子が容易に想像できて、郁未はくすくす笑った。
「ごめんごめん。
…わかったよ。僕が補習と言葉遣いや礼儀のレクチャーをしよう。
鬼塚くんは中学教材からの指導を頼む」
鬼塚はやや不思議そうな眼をした。
「…お前、なんだか楽しそうだな?」
「え?そう?」
自分では全く自覚していないことを言われ、思わず聞き返す。
「ああ。
楽しそうだし、随分と熱心だ。
…どうした?」
郁未はわざと音を立てて書類を整理する。
「別に…。
楽しいわけじゃない。
僕は粗野な子は嫌いだし、あの子には昨日からため息の吐きっぱなしだよ。
でも、あれくらいのじゃじゃ馬だと逆に闘争心が湧くからさ。
…それに…あの子を淑やかな女性に矯正できたら、この学院の名声も上がるだろう?
良い職場にも就職できるだろうし…もしかしたら、良い家庭から養女の話も来るかもしれない」
「まあな。…あの行儀の悪さを割り引いても、驚くくらい美人だからな」
鬼塚が神妙に頷いた。
それに力を得たかのように、郁未は立ち上がり宣言する。
「そうさ。だから僕は清良を徹底的に教育し直す。
…誰もが驚き、思わず振り返るような優雅で上品で美しい最高のレディにしてみせる」