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僕の美しいひと
第3章 じゃじゃ馬ならし
…なんなんだよ!この男は偉そうに!
清良のはらわたは、怒りで煮え繰り返っていた。
郁未は清良のする事なす事、口にする言葉すべてを淡々と注意し、その都度やり直しをさせた。
きちんとした言葉遣いができるまで何度も何度も…。
…どれだけお上品な貴族様か知らないけどさ、一々あたしの言葉尻とらえて…うるさいったらありゃしない!
憎悪を滾らせていくら睨みつけても、郁未は全く気にしない。
その高級な男雛のような典雅な貌で澄まし返しているのだ。
業を煮やして、清良は叫んだ。
「ちょっと!あんた!」
郁未が静かに訂正させる。
「嵯峨先生だよ、清良」
「嵯峨…先生!あんたさ、あたしにそんな貴族のお姫様みたいな口の利き方を教えてどうすんのさ⁈」
「どうなさるのですか?…だよ」
「どうなさるのですかッ⁈
…あたしは別にお上品な勤め先に勤める気もないし、もちろんお金持ちの家に嫁に行くつもりもないし!」
郁未はくすりと笑った。
「君みたいなじゃじゃ馬娘にプロポーズする男は、よほどの物好きだな」
「うるさいな!ほっといてよね!」
舌打ちする清良に、郁未は立ち上がりゆっくりと近づいた。
「君の悪い癖は癇癪を起こすことだ。
それでは立派なレディになれないよ」
清良は面食らったように眉を寄せる。
「レ、レディ?…何それ」
郁未の美しい手が、清良の形の良い顎にかかる。
「ちょっ…」
たじろぐ清良をじっと見つめる。
「…レディとは淑女…淑やかで優雅で品格のある身も心も美しい女性のことを言うのだよ。
…清良、君はとても綺麗だ。
ミルクのように白い肌、長い睫毛、黒瑪瑙のような美しい瞳、綺麗な鼻筋、可愛らしい唇…」
「…嵯峨…せんせ…」
激しく鳴り出す鼓動の音を郁未に聴かれないように、息を詰める。
ふっと郁未の瞳に悪戯めいた笑みが刷かれる。
手が離され、額を爪先で弾かれた。
「…だけどこのままじゃ、ただの綺麗なビー玉だ。
とてもダイヤの原石にもなれはしない」
「ビ、ビー玉?」
眼を丸くする清良に涼しい笑顔をくれながら、席に戻る。
「悔しかったら、せめてガラス玉になるくらいの努力をしなさい。跳ねっ返りさん。
…さあ、席に着いて。さっきの詩の暗唱をもう一度…」
…清良が教本を床に叩きつけたのは、言うまでもない。
清良のはらわたは、怒りで煮え繰り返っていた。
郁未は清良のする事なす事、口にする言葉すべてを淡々と注意し、その都度やり直しをさせた。
きちんとした言葉遣いができるまで何度も何度も…。
…どれだけお上品な貴族様か知らないけどさ、一々あたしの言葉尻とらえて…うるさいったらありゃしない!
憎悪を滾らせていくら睨みつけても、郁未は全く気にしない。
その高級な男雛のような典雅な貌で澄まし返しているのだ。
業を煮やして、清良は叫んだ。
「ちょっと!あんた!」
郁未が静かに訂正させる。
「嵯峨先生だよ、清良」
「嵯峨…先生!あんたさ、あたしにそんな貴族のお姫様みたいな口の利き方を教えてどうすんのさ⁈」
「どうなさるのですか?…だよ」
「どうなさるのですかッ⁈
…あたしは別にお上品な勤め先に勤める気もないし、もちろんお金持ちの家に嫁に行くつもりもないし!」
郁未はくすりと笑った。
「君みたいなじゃじゃ馬娘にプロポーズする男は、よほどの物好きだな」
「うるさいな!ほっといてよね!」
舌打ちする清良に、郁未は立ち上がりゆっくりと近づいた。
「君の悪い癖は癇癪を起こすことだ。
それでは立派なレディになれないよ」
清良は面食らったように眉を寄せる。
「レ、レディ?…何それ」
郁未の美しい手が、清良の形の良い顎にかかる。
「ちょっ…」
たじろぐ清良をじっと見つめる。
「…レディとは淑女…淑やかで優雅で品格のある身も心も美しい女性のことを言うのだよ。
…清良、君はとても綺麗だ。
ミルクのように白い肌、長い睫毛、黒瑪瑙のような美しい瞳、綺麗な鼻筋、可愛らしい唇…」
「…嵯峨…せんせ…」
激しく鳴り出す鼓動の音を郁未に聴かれないように、息を詰める。
ふっと郁未の瞳に悪戯めいた笑みが刷かれる。
手が離され、額を爪先で弾かれた。
「…だけどこのままじゃ、ただの綺麗なビー玉だ。
とてもダイヤの原石にもなれはしない」
「ビ、ビー玉?」
眼を丸くする清良に涼しい笑顔をくれながら、席に戻る。
「悔しかったら、せめてガラス玉になるくらいの努力をしなさい。跳ねっ返りさん。
…さあ、席に着いて。さっきの詩の暗唱をもう一度…」
…清良が教本を床に叩きつけたのは、言うまでもない。