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僕の美しいひと
第3章 じゃじゃ馬ならし
季節は初夏に移り変ろうかという頃、郁未の母、婉子が意気揚々と大磯からやってきた。
「今度こそ、お見合いしていただきますよ、郁未さん」
そう意欲満々な口調で机の上に山のように見合い写真を置いた。
郁未は小さくため息を吐いた。
「…お母様…何度も申し上げておりますが、僕は今結婚する気はさらさらないのですよ。
ようやく学院も軌道に乗り出して、これから活動範囲も広げようとしているのですから…」
婉子は愛らしい貌を大袈裟に顰めて郁未の前の椅子に腰掛けた。
「そんなことばかり仰って!貴方、もうすぐ三十歳になられてしまうじゃないの。お兄様方は貴方のお年にはもうお嫁様どころかお子様もいらしたのよ。
うかうかしていたらあっと言う間に四十歳を過ぎてしまうわよ」

婉子は戦前に父親と大磯の別荘に引退し、家庭菜園だのガーデニングだの第二の人生を楽しんでいる。
学院を立ち上げた時は、
「郁未さんだけに任せておけないわ!お母様がお手伝いにまいります」
と、腕利きの家政婦やメイドを引き連れ、助っ人として大いに尽力してくれた。

愛情溢れる性格は相変わらずだが、兎に角郁未の世話を焼きたくて仕方ないらしい。
特に未だに郁未が独身なのが心配で堪らないのだ。

「お母様、ご心配はありがたいですが、結婚相手くらい自分で探しますよ」
宥めるように言う郁未を婉子はじろりと睨む。
「そんな悠長なことを…。どなたかお好きな方でもいらっしゃるの?」
「…いいえ…」
憮然として答える。
「ほら、ご覧なさい。お仕事お仕事と言っていたら、いつまでたってもご結婚なんてできませんよ。
お母様に任せて。…とても良いお嬢様がいらっしゃるのよ。
…ああ、もし正式なお見合いで堅苦しいと仰るなら、略式のお見合いはいかが?
お互いそっとお相手をご覧になるだけの夜会を開きましょう。
お客様をたくさんご招待して。
それならば、お断りしてもお互い傷つかないわ。
…そうだわ。お兄様の西麻布のお屋敷で開いていただきましょう。
お兄様も郁未さんのご結婚をとてもご心配されていたのよ。
何て良いアイデアかしら!
ね!郁未さん」
「…はあ…」
…昔から、母の勢いには勝てない。
郁未は仕方なく不承不承頷いた。

…と、その時。
軽やかなノックの音と共に透明な美しい声が聞こえた。
「…失礼いたします。
お茶をお持ちいたしました」


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