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僕の美しいひと
第4章 真実と嘘
婉子は次々に、若く美しい令嬢たちをさりげなく郁未に紹介した。
娘たちは皆、恥ずかしそうに優雅に挨拶し…しかし遠慮勝ちではあるが熱い眼差しで郁未を見つめていた。

郁未は本人は全く頓着しないが、典雅な男雛のような美貌を持ち、柔らかな品のある物腰と優しげな口調で、以前から社交界のうら若き令嬢たちからは好感を持たれていた。

…見目良い嵯峨公爵の末息子…。
私学の学院を設立し、今や学院長の肩書きを持つ若き貴公子は結婚相手としては大変な人気を博していたのだ。

一方郁未は社交が苦手で、婉子から無理やり引っ張り出されない限り出席しようとしなかったので、今夜のように大勢の若く美しい令嬢たちを紹介され、たじたじとなっていた。

「…さっきの鍋島公爵令嬢なんてどうだ?
美人だし、趣味は乗馬だそうだ。お前と話が合うんじゃないか?
…鍋島家は大変な資産家だ。
父親は一人娘の柊子嬢を大変に可愛がっているから、お前の学校事業にも尽力してくれる筈だぞ」
賢一郎はそっと耳打ちをする。
…さすがに賢一郎は商売人だ。

「…はあ…。確かにお美しい方ですね…」
…どの令嬢も美しいし、可憐だ。
富裕な家庭の子女ばかりだからドレスもアクセサリーも華やかで目を惹くものばかりだ。
経歴や礼儀作法や言葉遣い、所作も申し分ない。

…けれど…。

心に響く女性は、ひとりもいなかった。

…違う…。
郁未は、小さく息を吐く。

…そうじゃない…。
僕の心を打つひとは…。

不意に、郁未の脳裏に清良の強く美しい眼差しが現れた。
…「…見合い、するんだろう…?」
怒ったような清良の表情…。

自分でも驚くほどに動揺する。
…何を考えているんだ…!
清良なんて…彼女は生徒じゃないか…!

慌ててその面影を振り払うように手にしたシャンパンを飲み干した。








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