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僕の美しいひと
第4章 真実と嘘
焦ってはいけないと郁未は自分自身に言い聞かせた。
…もしかしたら稀有な偶然かも知れない。
何しろカメオと名前しか共通点はないのだから…。
まだ決定的とは言えないのだ。

郁未は敢えて落ち着こうとゆっくりと息を吐いた。
そして、高遠を見つめ口を開いた。
「侯爵。カメオの特徴を詳しく教えてください」
「…楕円形のサーモンピンクのカメオです。縁に細かな銀細工が施されていて…金鎖がついていて…。
一番の特徴はカメオはロケットになっています」
「ロケット?」
「はい。蓋を開けると、中に私が書いた命名書が折り畳まれて入っています。
高遠清良…と。
そして私の名前と誕生日の日付も記されています。4月20日です」
「…あの…郁未様…?」
訝しむような眼差しで、伊津子が見上げる。

「また必ずご連絡いたします。
失礼いたします」
表情を引き締め短く告げると、足早に広間を駆け出した。
来客たちが風のように駆け抜ける郁未を、驚いたように注目する。

郁未の背中に、当惑した婉子の声が飛ぶ。
「郁未さん!どちらにいらっしゃるの⁈
お見合いはどうなさるの⁈郁未さん!」
母の声を無視して、広間を後にする。
大階段を駆け下り、玄関の車寄せに待機していたメルセデスに飛び乗る。
「すぐに学院にやってくれ。急いで!」
普段穏やかな郁未の豹変ぶりに驚きながらも、運転手は慌ててエンジンを掛けた。


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