この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
僕の美しいひと
第4章 真実と嘘
対面は、郁未の自宅の客間で行われた。
郁未と…鬼塚も立ち会うことになった。
高遠侯爵夫人、伊津子は夫に支えられないと崩れ落ちそうなほど、感極まっていた。
「本当なのでしょうか?…本当に私たちの娘、清良がここに…」
涙ぐむ伊津子は江戸紫の品の良い小紋に身を包み、長丈の黒い絵羽織を身に付けていた。
地味な夜会巻きに結い上げた髪は艶やかで、そこから覗く細い頸は透き通るように白い。
…やはり、似ている…と、夫人の類い稀なる美しさを近くで見て、郁未は確信を強めた。
「間違いないよ、伊津子。
このカメオ…そしてこの命名書が何よりの証拠だ。
カメオの裏には高遠家の家紋が彫り込んであるし…この命名書は、まさしく私が十七年前に書いたものだ…!
ああ、郁未くん。貴方には何とお礼を申し上げたら良いのか…!」
高遠義彦がカメオを握りしめ、声を詰まらせた。
「いいえ。私はただ、偶然の事実を確かめただけです。
…あとは清良…いえ、清良さんとの対面が無事に行けば良いのですが…」
その言葉に、義彦が敏感に反応する。
「清良は、何と言っているのですか?」
郁未は率直に答えた。
「…動揺されています。
まだ真実を受け止めかねるようなご様子です…」
義彦がため息を吐いた。
「無理もない…。
赤ん坊の頃に誘拐されて、その女を母親と信じ込まされていたのだから…」
伊津子が震える唇を開いた。
「…私、どのような状態でも構いません。
あの子に会えるなら…。生きて会えるなら…!」
「伊津子…!私もだよ…」
夫人の白魚のような手を義彦が強く握りしめた。
…軽いノックの音と共に、しっとりと美しい声が響いた。
「…失礼いたします。
清良さんをお連れしました」
…笙子の声だ。
高遠夫妻が立ち上がった。
…ゆっくりと、扉が開いた。
郁未と…鬼塚も立ち会うことになった。
高遠侯爵夫人、伊津子は夫に支えられないと崩れ落ちそうなほど、感極まっていた。
「本当なのでしょうか?…本当に私たちの娘、清良がここに…」
涙ぐむ伊津子は江戸紫の品の良い小紋に身を包み、長丈の黒い絵羽織を身に付けていた。
地味な夜会巻きに結い上げた髪は艶やかで、そこから覗く細い頸は透き通るように白い。
…やはり、似ている…と、夫人の類い稀なる美しさを近くで見て、郁未は確信を強めた。
「間違いないよ、伊津子。
このカメオ…そしてこの命名書が何よりの証拠だ。
カメオの裏には高遠家の家紋が彫り込んであるし…この命名書は、まさしく私が十七年前に書いたものだ…!
ああ、郁未くん。貴方には何とお礼を申し上げたら良いのか…!」
高遠義彦がカメオを握りしめ、声を詰まらせた。
「いいえ。私はただ、偶然の事実を確かめただけです。
…あとは清良…いえ、清良さんとの対面が無事に行けば良いのですが…」
その言葉に、義彦が敏感に反応する。
「清良は、何と言っているのですか?」
郁未は率直に答えた。
「…動揺されています。
まだ真実を受け止めかねるようなご様子です…」
義彦がため息を吐いた。
「無理もない…。
赤ん坊の頃に誘拐されて、その女を母親と信じ込まされていたのだから…」
伊津子が震える唇を開いた。
「…私、どのような状態でも構いません。
あの子に会えるなら…。生きて会えるなら…!」
「伊津子…!私もだよ…」
夫人の白魚のような手を義彦が強く握りしめた。
…軽いノックの音と共に、しっとりと美しい声が響いた。
「…失礼いたします。
清良さんをお連れしました」
…笙子の声だ。
高遠夫妻が立ち上がった。
…ゆっくりと、扉が開いた。