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僕の美しいひと
第4章 真実と嘘
笙子に肩を抱かれながら、清良が現れた。
…清良は、長く美しい髪を綺麗に臙脂色のリボンで結い上げ、黄緑色の地に白い小花が描かれた裾の長いドレスを身につけていた。
襟元には繊細なレースが縁取られているそれは、おそらくは笙子のかつての私服であろう。
急だったので、清良に質の良い私服を揃えてあげられなかったのを、笙子が機転を効かせたのだ。
細い腰回りには、クリーム色の幅広のサッシュベルトが巻かれており、華やかな雰囲気を醸し出している。
白い絹の靴下にストラップ付けの黒いローヒールを履いたその姿は、そのままお茶会に出ても遜色がないような優美な上流階級の令嬢の姿だった。
…そして何より、清良の美貌は見慣れた郁未ですら眼を奪われるほど、華やかに輝き気品に満ちたものだった。
義彦が眼を見張り、呟いた。
「…伊津子…君の少女時代にそっくりだ…。
まるで生き写しだ…!」
伊津子は瞬きもせずに清良を見つめていた。
透明な涙が一筋、伊津子の白い頬を伝って落ちた。
「…清良さん…清良さんなのね…!
私には分かるわ…貴方は…私の大切な娘だわ…!」
そう震える声で掻き口説くと、小走りで清良に駆け寄り、抱き竦めた。
「…清良さん…ごめんなさい…!
貴女を探しきれなくて…ごめんなさい…。
お母様を赦して…赦して…」
清良の美しい貌は硬いままだった。
…しかし伊津子の抱擁を受け、長い睫毛を瞬かせ…唇を開いた。
「…あたし…あたし…なんて言ったらいいか…」
声は掠れ、震えていた。
強張る清良の貌を、伊津子は愛おしげにそっと撫でた。
「何も仰らなくていいのよ…。貴女が生きていてくれた…貴女に会えただけで、お母様は幸せなの…。
…私…生きていてよかったわ…。
貴女を奪われて…何度も死のうと思ったわ…。
…でも、死ななくてよかった…。
貴女に会えた…。
貴女をこうして抱きしめることができた…。
…清良さん…!私の…可愛い娘…!」
…そのあとは嗚咽となり…言葉は成さなかった…。
…清良は、長く美しい髪を綺麗に臙脂色のリボンで結い上げ、黄緑色の地に白い小花が描かれた裾の長いドレスを身につけていた。
襟元には繊細なレースが縁取られているそれは、おそらくは笙子のかつての私服であろう。
急だったので、清良に質の良い私服を揃えてあげられなかったのを、笙子が機転を効かせたのだ。
細い腰回りには、クリーム色の幅広のサッシュベルトが巻かれており、華やかな雰囲気を醸し出している。
白い絹の靴下にストラップ付けの黒いローヒールを履いたその姿は、そのままお茶会に出ても遜色がないような優美な上流階級の令嬢の姿だった。
…そして何より、清良の美貌は見慣れた郁未ですら眼を奪われるほど、華やかに輝き気品に満ちたものだった。
義彦が眼を見張り、呟いた。
「…伊津子…君の少女時代にそっくりだ…。
まるで生き写しだ…!」
伊津子は瞬きもせずに清良を見つめていた。
透明な涙が一筋、伊津子の白い頬を伝って落ちた。
「…清良さん…清良さんなのね…!
私には分かるわ…貴方は…私の大切な娘だわ…!」
そう震える声で掻き口説くと、小走りで清良に駆け寄り、抱き竦めた。
「…清良さん…ごめんなさい…!
貴女を探しきれなくて…ごめんなさい…。
お母様を赦して…赦して…」
清良の美しい貌は硬いままだった。
…しかし伊津子の抱擁を受け、長い睫毛を瞬かせ…唇を開いた。
「…あたし…あたし…なんて言ったらいいか…」
声は掠れ、震えていた。
強張る清良の貌を、伊津子は愛おしげにそっと撫でた。
「何も仰らなくていいのよ…。貴女が生きていてくれた…貴女に会えただけで、お母様は幸せなの…。
…私…生きていてよかったわ…。
貴女を奪われて…何度も死のうと思ったわ…。
…でも、死ななくてよかった…。
貴女に会えた…。
貴女をこうして抱きしめることができた…。
…清良さん…!私の…可愛い娘…!」
…そのあとは嗚咽となり…言葉は成さなかった…。