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僕の美しいひと
第1章 春の野良猫
「…ちょっ…ここ…どこ…?」
タクシーに押し込められ、連れてこられた洗足学院に一歩入るなり、少女は絶句した。
学院は英国のパブリックスクールを模した正統なヴィクトリア建築で構築された建物だ。
煉瓦造りの重厚な外観に広い玄関ホール、灯り取りの窓は全てステンドグラスである。
細かい意匠が施された内装や二つ折りの大階段を落ち着かない様子で見回しながら、少女は郁未を睨みつけた。
「…あんた…あたしに何するつもり!?」
「へ?」
「ここはGHQ相手の遊郭かなんかだろ?
あたしを手篭めにして娼婦にするつもりなんだろ?
このクズ野郎!誰がその手に乗るもんか!」
喚き散らし、玄関から逃げ出そうとする少女を郁未は羽交い締めにする。
「落ち着きなさい!ここは孤児達が暮らす寄宿学校だ!
君の詳しい話を聞きたくて連れてきたんだ」
少女は尚も郁未に敵意を剥き出しにしながら、腕の中で暴れる。
「嘘だね!こんな立派な学校が、孤児院なわけない!」
…その時、大階段の上から美しい声が響いてきた。
「…まあ、郁未さん。どうなさったのですか?」
郁未は、少女を抱き留めながら振り返る。
「笙子さん!」
タクシーに押し込められ、連れてこられた洗足学院に一歩入るなり、少女は絶句した。
学院は英国のパブリックスクールを模した正統なヴィクトリア建築で構築された建物だ。
煉瓦造りの重厚な外観に広い玄関ホール、灯り取りの窓は全てステンドグラスである。
細かい意匠が施された内装や二つ折りの大階段を落ち着かない様子で見回しながら、少女は郁未を睨みつけた。
「…あんた…あたしに何するつもり!?」
「へ?」
「ここはGHQ相手の遊郭かなんかだろ?
あたしを手篭めにして娼婦にするつもりなんだろ?
このクズ野郎!誰がその手に乗るもんか!」
喚き散らし、玄関から逃げ出そうとする少女を郁未は羽交い締めにする。
「落ち着きなさい!ここは孤児達が暮らす寄宿学校だ!
君の詳しい話を聞きたくて連れてきたんだ」
少女は尚も郁未に敵意を剥き出しにしながら、腕の中で暴れる。
「嘘だね!こんな立派な学校が、孤児院なわけない!」
…その時、大階段の上から美しい声が響いてきた。
「…まあ、郁未さん。どうなさったのですか?」
郁未は、少女を抱き留めながら振り返る。
「笙子さん!」