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僕の美しいひと
第4章 真実と嘘
言葉通りに伊津子は毎日、清良を訪ねるようになった。
昼食やお茶の時間に来て、一緒に食事を摂ったりお茶を飲んだり…まだ緊張している為に口数少ない清良の話を一言一句漏らさぬように大切そうに…愛おしげに相槌を打つのだ。
授業を廊下からそっと覗くだけで帰る日もあった。
伊津子の手作りだというお萩や、マドレーヌを持って来るだけの日もあった。

…この日もそうだった。
梅雨の長雨が降りしきる中やってきた伊津子は、清良に美しい紫の縮緬の風呂敷包みを渡した。
「いなり寿司を作ったの。
…前に清良さんがお好きだと仰っていたから…。
でも、初めて作ったから…お口に合わなかったらごめんなさいね。
…うちの料理長に教わりながら作ったの…」
恥ずかしそうに微笑った伊津子に、清良はつられるように少し笑った。
清良の笑顔を見た伊津子は嬉しそうに笑みを深くした。
「…ありがとうございます…」
受け取りながら、礼を言う。

「…皆様によろしくお伝えくださいね。
また、まいりますね…」
そう言うと、帰ろうとする伊津子を思わず引き留める。
「…あの…。待ってください。
…髪が濡れてるから…」
伊津子の艶やかな黒髪に透明な雨の粒が僅かに浮かんでいたのだ。
車寄せから玄関に来るまでに濡れたのだろう。

ポケットから取り出した白いハンカチで丁寧に伊津子の髪を拭く。
「…風邪…引いたら大変だから…」
驚いたように伊津子が眼を見張り…涙ぐむ。
「…ありがとう…」
そして、囁いた。
「優しいのね、清良さん…」
ハンカチを持った手を、そっと握りしめられる。
遠慮勝ちだが、痛いほどの愛情が伝わってきた。

「…あの…。一緒に…食べませんか…?いなり寿司…」
気がつくと、そう誘っていた。
伊津子は泣き出しそうな表情をして、嬉しそうに笑った。
「…ありがとう、清良さん…」




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