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僕の美しいひと
第6章 すれ違う想い

「…ゴミだらけの掃き溜めのような施設、暖もなく南京虫が蔓延るベッド、犬の餌のような劣悪な食事、暴力を振るう年長者、施設の人間は孤児を虐めるのを生きがいにしていた最低の奴らでした…。
…あそこはまさに生き地獄の場所でしたね…」
淡々と他人事のように呟く原嶋に釘付けになる。
「私はそこから抜け出したくて、何でもしましたよ。
…上品な貴方にここでは言えないようなことも数知れず…。
そうしないと、生きてこられませんでしたからね」
「…そうでしたか…。それは…大変なご苦労をされましたね…」
ぎこちない言葉は、口に出せばひたすらに軽薄に感じてしまうものであった。
郁未は唇を噛み締める。
そんな郁未を面白いものでも見るかのように、陽気な笑顔を向けた。
「貴方がそんな貌をなさる必要はない。
貴方が貴族に生まれ何不自由ない生活をされてきたのも、私が孤児院に育ち動物以下のような生活をしてきたのも、貴方のせいではない」
「…原嶋さん…」
…けれど…と、原嶋は煙草を深く吸い込み…そのまま吐き出すとはっきりと言い放った。
「私は貴方が大嫌いです」
息を呑み、原嶋を凝視する。
「原嶋さん…?」
「貴方が貴族だから嫌いなのではありません。
貴方がご自分の欲望に嘘つきだから嫌いなのです」
「…何を…仰るのですか?」
原嶋はゆっくりと煙草をクリスタルの灰皿に押し付けて消した。
「貴方は清良さんを愛していますね。
…それなのになぜ、それを告げられないのですか?」
原嶋の瞳は冷たく冴え冴えと澄んでいた。
それは、徹底的に獲物を追い詰める野生の肉食動物のそれに似ていた。
目を逸らすことは決して許さない獰猛な生き物…。
郁未は息が詰まるような緊迫感に襲われた。
…あそこはまさに生き地獄の場所でしたね…」
淡々と他人事のように呟く原嶋に釘付けになる。
「私はそこから抜け出したくて、何でもしましたよ。
…上品な貴方にここでは言えないようなことも数知れず…。
そうしないと、生きてこられませんでしたからね」
「…そうでしたか…。それは…大変なご苦労をされましたね…」
ぎこちない言葉は、口に出せばひたすらに軽薄に感じてしまうものであった。
郁未は唇を噛み締める。
そんな郁未を面白いものでも見るかのように、陽気な笑顔を向けた。
「貴方がそんな貌をなさる必要はない。
貴方が貴族に生まれ何不自由ない生活をされてきたのも、私が孤児院に育ち動物以下のような生活をしてきたのも、貴方のせいではない」
「…原嶋さん…」
…けれど…と、原嶋は煙草を深く吸い込み…そのまま吐き出すとはっきりと言い放った。
「私は貴方が大嫌いです」
息を呑み、原嶋を凝視する。
「原嶋さん…?」
「貴方が貴族だから嫌いなのではありません。
貴方がご自分の欲望に嘘つきだから嫌いなのです」
「…何を…仰るのですか?」
原嶋はゆっくりと煙草をクリスタルの灰皿に押し付けて消した。
「貴方は清良さんを愛していますね。
…それなのになぜ、それを告げられないのですか?」
原嶋の瞳は冷たく冴え冴えと澄んでいた。
それは、徹底的に獲物を追い詰める野生の肉食動物のそれに似ていた。
目を逸らすことは決して許さない獰猛な生き物…。
郁未は息が詰まるような緊迫感に襲われた。

