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ガーネット弐番館
第10章 新しい出来事
夜も遅くなって、しかも雨も降ってきたし、そのまま泊まるように言われたが、睦美が運転して実家を出た。
アパートまで40分ちょっとかかる。

航平が翌日も仕事だというのと、睦美が実家に航平と泊まるのが恥ずかしかったからだ。

なにせ、睦美の部屋はもう妹家族に占拠されており。
泊まるとしたら、1階の客間と呼ぶ和室しかない。


「ん?別にいいじゃん?」

泊まりたかったのか、航平が助手席で不思議がっている。

ごく最近ネットで注文したベッドが届くまで、航平はガーネット弐番館の畳の部屋に布団を敷いて寝ている。
今まで畳の部屋で生活したことはなかったが、畳も悪くないと思えてきたところだ。

「私が嫌なの」

実家で2人で寝る、というのが気恥しい。

「久しぶりにシたいから?」

ズバッと核心を突かれて、言葉に詰まる。
女の子特有の例の期間が終わったところなのだ。
終了自体はまだ航平には伝えてないけど。

「...違うよ。何言ってんの」

「ふーん。間があったけど?」

狭い軽自動車の中で、航平が睦美を食い入るように見つめる。

その視線を感じながらも、そのまま運転に集中する。
慣れた道とはいえ、夜だし雨も降っている。

信号がなかなか無くて、やっと止まった。

「睦美」

「...何」

「今日する?」

なんでそんな事を聞くかな。

しかも、今。

長い信号がもどかしい。

雨の音とワイパーのせわしなく動く音がやけに耳につく。

こちらに食い入るように顔を向けたままの航平は、きっと睦美から何かしらの答えが帰ってくるまでそうしてるのだろう。

「...うん」

信号が変わって、アクセルを踏み込みながら、小さく呟いた。

やっと航平の顔の向きが変わって、複雑な気持ちながらもどこか安心する。

雨が降っているからか、じめっと汗をかいてきた。

「この辺、どっか展望台とかないの?」

窓の外を見ながら、航平が呟いた。

「え?気分悪い?」

そんなに飲んでないと思ったけど、山道を走っているから酔いが回っただろうか。

「ちょっと待って。もうちょっと行ったらコンビニあるから」

もうちょっとと言っても10分はかかるかも。

「いや、ちょっと休憩したいだけ」

「そう?大丈夫?」

所々に車の回避場はあるけど、とごか車が止めれるとこあったかな?
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