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ガーネット弐番館
第10章 新しい出来事
もうすぐ通りかかる橋のところに少し公園があったかも。
公園と言っても、屋根のついた机と椅子がちょっとあって。
昼間、たまに休憩する人を見かけるぐらいのところだ。
夜は電気とかがあったかな?
自販機の明かりがかろうじてあった気がするけど。

「そこでいいよ」

ほどなく通りかかって、車を止める。

「大丈夫?お茶飲む?」

確か、後部座席にお茶があったはず。

「うん」

返事しながら、航平がシートをめいっぱい倒している。

やっぱり気持ち悪くなったかな。

「はい」

ペットボトルを開けて、航平に差し出す。

でも航平は片手をおでこに乗せていて、受け取る気配がない。

「...飲ませて」

はい?

そんな倒れて、どうやって飲ませろと。
角度的に手が届かない。

「口移しで」

顔を隠していた手が離れて、口の端が僅かに笑っている。

「!!」

心配して損した!

お茶を差し出したまま、顔を背ける。

恐らく小さく笑った航平がお茶を受け取った。

「...雨、凄いな」

確かに、実家に行きがけはここまで降ってなかった。
今は、どしゃ降りと言ってもいいぐらいだ。
ペラペラの軽四に雨音が激しく当たって音を立てている。

そんな中でも、航平がお茶を飲む音や、一息ついたのが睦美の耳にやたらと響いてくる。

不意に航平の手が睦美のそれに重なり、びくっとしてしまった。

手の中の、ペットボトルのキャップが取られただけだ。

と思ったのに、顔を向けると航平のいつもの「ん?」って顔が、今にも唇が触れる距離までゆっくりと近づいてくる。

「大丈夫なの?」

「ん」

返事と共に唇が触れて、優しく吸い付く。

「言ったじゃん。休憩したいだけ」

何度もキスが交わされる度に、ねっとり絡まって深くなってゆく。

このシてない1週間、こんなキスもしてなかった。

いつの間にか、助手席の航平の上に引き寄せられ倒れ込んでいる。

「これ以上、ダメだよ」

「なんで?」

追いかける航平の舌が、逃れようとする睦美の首すじを舐め回す。

「...シたくなっちゃう」

もう充分過ぎるほど、カラダが熱くて。
きっと濡れてきている。

「ん。このままシたい」

「うそ...」

こんな狭い車の中なんて無理。
雨が凄いとはいえ、外から丸見えだし。
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